2011年7月13日

内閣総理大臣  菅  直人 様
内閣府特命担当大臣  平野 達男 様
内閣府特命担当大臣  細野 豪志 様
厚生労働大臣  細川 律夫 様
総務大臣  片山 善博 様
国土交通大臣  大畠 章宏 様

日本障害フォーラム(JDF)
代表 小川 榮一

被災障害者等への支援と復旧・復興施策に関する要望

 東日本大震災における被災障害者に対して、さまざまな尽力と配慮をいただいていることに心より敬意を表します。
さて3月11日の震災発生から4か月が経過し、今後の復興に向けては、新たな復興基本法の下に対応が進められているところです。一方、被災地ではなお厳しい状況が続き、特に障害者についてはその被害の実情とニーズの把握に基づく緊急かつ継続的な支援が求められます。
以上を踏まえて、次の事項について要望します。いずれも重要かつ緊急性を帯びるものであり、確実かつ速やかな実現を切望します。

1.被災障害者の正確な実態把握を速やかに実施してください。
 被災障害者の実情については、地方公共団体や民間団体による調査が一部行われているものの、犠牲者ならびに行方不明者のうちの障害者数といった基礎的データについては、いまだ明らかになっていません。また施設入所者、精神科病院を含む入院患者の被災状況も不明です。
 被災障害者の実態に関するデータは、今後の支援活動や復興に向けての礎となるものです。国の責任とイニシアティブによって(地方公共団体との連携を図りながら)実態調査を実施し、その結果を公表してください。なお、実態調査の対象者は広範なものとする必要がありますが、その第一段階においては、「障害者手帳」の所持者、精神科病院入院患者等を対象としてください。

2.障害者権利条約を指標に、当事者参加の復興計画を策定してください。
 災害による被害とその課題は、障害者に最も凝縮した形で表れると言えます。今後の復興と、新たなまちづくりを含む新生に向けては、排除や分け隔てのない「インクルーシブな社会」の構築を旨とすることで、すべての人が安心できる社会が実現できると考えます。このことから、今後の復興計画・対策の策定と実施にあたっては、障害者権利条約を指標のひとつとするとともに、国および地域レベルにおいて、障害当事者の直接的な参加を確保してください。

3.災害時等の緊急放送に関して、特にテレビ放送については関係障害団体の代表を加えての検討会を設置してください。
 原発事故や余震、復旧・復興に関する災害関連情報は今も日々発信されており、これらの情報入手は生命や財産に関わる緊急性を伴います。音声情報の文字化(点字を含む)、文字情報の音声化、手話通訳者・要約筆記者の配置、分かりやすい情報提供など、障害者に対する情報保障を徹底してください。
 とりわけ、テレビ放送は情報入手に極めて大きな役割があり、災害情報に関しては、生放送での字幕放送、手話放送、解説放送を早急に完全実施してください。
 さらに、音声からも、字幕等の文字からも、自力で情報を得ることが困難な、盲ろう者等の障害者への情報保障について配慮をお願いします。
 また災害時のテレビ放送における情報保障について、国の主催により、放送事業者、電器・通信等事業者、障害者団体(視覚障害、聴覚障害、盲ろう等)、関係団体等による検討会を新設し、課題解決を推進してください。

4.災害時要援護者対策を含む、防災対策の検証を行ってください。
 このたびの未曾有の被害を受け、これまでの防災対策の検証が求められるところです。災害時要援護者対策における要援護者情報の共有、避難支援計画のあり方、福祉避難所の設置等を含め、実際の事例に基づき、障害者団体の参加の下に検証を行い、今後の対策づくりを行ってください。

5.県外に避難した被災障害者等の把握と支援を行ってください。
 被災障害者のうち、県外の避難所等に避難したり、県外の病院等に入院・転院した人たちの実態が明らかになっておらず、必要な支援が届いていないことが懸念されます。その実態の把握と情報開示、支援を速やかに行ってください。

6.仮設住宅のバリアフリー化を急ぐとともに、今後の復興に向けた住宅整備を行ってください。
 設置が進められている仮設住宅は入口の段差などバリアフリー化がなされておらず、改修工事も入居に間に合わないなどの例があることから、バリアフリー化を早急に行ってください。
 また仮設住宅の入居期限である2年が過ぎたあとに、住宅への入居困難者が出ないよう、公営の復興住宅等を含む住宅整備を進めるとともに、車いす利用者等が入居できるバリアフリー住宅を十分に確保してください。
なおバリアフリー仕様の仮設住宅・復興住宅等の設置にあたっては、障害者団体等の意見を聞き、障害者が実際に住みやすいよう十分な配慮を行ってください。

7.沿岸部・原発隣接区域における瓦礫撤去、土壌除染、ならびに医療・福祉サービスの整備を国として推進してください
 沿岸部になお大量に残された瓦礫は、気温の上昇とともに腐敗が進み、感染症の発生等が懸念されます。また原発事故による土壌や物の汚染、社会資源の破壊などは、住民の健康や安全・安心に深刻な影響を与えています。障害者は乳幼児や高齢者等と共にこのような状況に特に影響を受けやすく、速やかな対策が望まれます。被災自治体等の対応には限界があることから、瓦礫撤去や土壌の除染等を国として強力に推進してください。また沿岸部・原発隣接区域等における、精神科医療を含む医療の整備、障害者支援事業所への支援を早急に行ってください。

8.被災障害者支援活動に対する支援を行ってください。
 被災地における支援ニーズは依然として続いています。自ら被災した民間団体や支援事業所が、被災障害者の支援に当たるとともに、全国各地から多くの支援者・団体が現地に駆けつけ支援活動を続けています。
 これらの支援活動に対して、国、自治体から、人員派遣や資金的援助を含む支援を行い、活動が円滑に進められるよう配慮をお願いします。