要望書・意見書
■最終更新 2017年4月7日
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精神保健福祉法を改正する法律案への意見書
2017年2月、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(以下、精神保健福祉法改正案)が閣議決定され、国会に上程されました。この改正案は、法律案要綱によると「精神障害者に対する医療の役割を明確にすること」や「精神障害者の社会復帰の促進」等が趣旨とされているところですが、同時に法律案概要では、昨年7月に起きた相模原市の障害者施設の事件について触れ、「二度と同様の事件が発生しないよう・・・法整備を行う」ともされています。
相模原市の事件については、被疑者の鑑定留置の結果、責任能力があるとされ、去る2月24日に起訴されるとともに、今後行われる裁判において、事件の真相が明らかにされるところであり、このような中で、この種の事件と精神障害を短絡的に結びつけることはできません。
改正案の審議にあたっては、人々に精神障害への誤解を与えることがないよう、またこれまで進められてきた地域生活への移行の取り組みが弱まり逆行することがないよう、法案の趣旨と内容について十分な議論と対応を行う必要があります。
日本は、数年後に国連による障害者権利条約の審査を控える時期にあり、精神保健福祉法も等しく条約水準との整合性が問われることになります。
日本障害フォーラム(JDF)は、このたびの精神保健福祉法改正案の上程をとらえ、この法律の内容ならびに運用が、条約の趣旨に沿ったものとなるよう求めるとともに、それと関連する施策のあり方についてあわせて意見を表明します。
一、退院後支援計画の作成にあたっては、退院の延滞が生じることがないよう、また、退院後支援計画及び精神障害者支援地域協議会の運用にあたっては、対象となる人を監視する趣旨とならないようにする必要があります。
二、重度訪問介護等の利用拡大とともに地域移行を進めていかなければなりません。その際には「重度かつ慢性」のような基準で地域移行の可否を機械的に分けることなく、一人一人の地域生活を実現していく必要があります。
三、医療保護入院における手続きや家族同意の問題について引き続き検討する必要があります。
四、非自発的入院や行動制限等が増加しないよう対策を講じ、減少を図る必要があります。
五、非自発的入院者への実効性のある権利擁護の仕組みを検討する必要があります。
六、この法律が障害者基本法の理念に基づくことを目的に明記する必要があります。
七、政府、立法府における政策の決定プロセスにおける障害当事者の参画を更に推進する必要があります。
また、障害者権利条約の趣旨に基づいた法改正が行なわれるように検討する場が必要です。
2017年4月7日
日本障害フォーラム