要望書・意見書
■最終更新 2018年8月15日
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旧優生保護法による強制不妊手術問題に関する声明
国は被害者に速やかな謝罪と救済を
今年、勇気ある1名の方の提訴によって、旧優生保護法による強制不妊手術問題への社会的関心がようやく高まりました。旧優生保護法に基づき行われた強制不妊手術は、1万6475件と報告されています。同意があったとされるものを加えると、2万4993件の不妊手術が行われたとされており、この中には、家族や関係者の勧めによってやむなく受けさせられた人もかなりいると言われています。
これに対して政府は、未だ「旧優生保護法下の強制不妊手術は合法だった」という姿勢を崩しておらず、また法律そのものの憲法適合性(違憲性)についても見解を示していません。人権を無視し、障害を否定し、一人の人間の身体を暴力的に侵襲し、障害者の人間としての尊厳を否定する行為のどこが合法的なのでしょうか。基本的な人権を侵害されてしまった圧倒的多くの被害者はこれまで、この事実を社会的に訴えるどころか、誰にも話すことすらできなかったのです。2年前に相模原市の津久井やまゆり園で発生した大量死傷事件の背景にも、このような国や社会の姿勢が共通してあったのではないでしょうか。
国会では、問題の重要性の認識の下、迅速な対応により、超党派の議員連盟がつくられ、また与党においてもワーキングチームが立ち上げられこの問題に関する救済法の早期制定を検討中であることは評価します。しかし多くの被害者たちの「手術が行われた」とする資料が廃棄されている実態があり、救済法を制定するにあたっては、そうした被害者をも対象とすべきだと私たちは認識しています。
国は、1日も早く、旧優生保護法および同法での強制不妊手術は過ちであったことを認め、被害者に謝罪をするべきです。
日本は、「全ての障害者は、他の者との平等を基礎として、その心身がそのままの状態で尊重される権利を有する」(第17条)、「障害者(児童を含む。)が、他の者との平等を基礎として生殖能力を保持すること」(第23条)と明記している障害者権利条約の批准国です。また国内法の障害者基本法でも、「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである(第1条)」と規定しています。長期にわたり強制不妊手術がなぜ行われたのか検証していくことが、過ちを再び犯さないために重要なことだと考えます。
障害者の身体への権力による介入が解決策ではなく、障害者に対する社会的障壁をつくり出してしまっている社会こそ是正されるべきなのです。
私たち日本障害フォーラム(JDF)は、障害者を中心に13の全国団体で構成されています。私たちは以上の認識にたち、下記について早急な実施を強く要望するとともに、この社会に住む一人一人が、この問題について改めて考え、話し合い、伝え合うことを求めます。
記
- 国は、旧優生保護法により強制不妊手術を受けさせられたすべての被害者に対して、その過ちを認め、謝罪すること。また、被害者を対象とした「救済法」を速やかに制定すること。
- 国は、旧優生保護法が憲法違反だったことを認めること。
- 同時に、この問題の重要性に鑑み、旧優生保護法による強制不妊手術にとどまらず、形式上は同意のある不妊手術や妊娠中絶手術についての資料の保全と調査対象の拡大について、地方公共団体及び関係機関に対し指示すること。
- また、この問題が与える社会的影響を考慮し、「検証委員会」を立ち上げること。それは各界各層の人によって構成し、障害当事者団体も構成メンバーとすること。
以上
2018年8月15日
日本障害フォーラム(JDF)