要望書・意見書
■最終更新 2021年3月23日
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障害者虐待防止法改正について(要望)
2021年3月23日
内閣総理大臣 菅 義偉 様
厚生労働大臣 田村 憲久 様
日本障害フォーラム(JDF)
代表 阿部 一彦
障害者虐待防止法改正について(要望)
貴職におかれましては、日頃より障害者権利条約の完全履行に向け、政策推進をされていることに心から敬意を表します。
さて、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(以下、障害者虐待防止法)が施行されて8年が経ちますが、障害のある人々への虐待事案は後を絶ちません。2020年3月には医療法人財団兵庫錦秀会神出病院(兵庫県神戸市西区)において、入院患者に対して虐待・暴行を行ったとして、看護師ら6人が逮捕される事案が発生しました。また、2016年7月に殺傷事件が起きた相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」についても、神奈川県が設置した第三者委員会によってはじめて、長期間にわたって一部の利用者に対する虐待行為の疑いがあったことが明らかにされました。
本来であれば、3年後の見直し規定に則り、法整備が進んでいるところが、改正の方向性が示されていないことについて重大な懸念を改めて表するとともに、以下の項目を踏まえて速やかな法改正を要望いたします。
(1)通報義務の対象に医療機関、教育機関、官公署などを含めること
障害者虐待防止法の通報義務の対象範囲が、養護者、福祉施設従事者等の使用者に限られており、医療機関、教育機関、官公署などが通報義務の対象に含まれておらず、障害者が虐待されても通報に至っていません。対象範囲ごとにこれまでの法律との整合性が問題となっていることから、課題の洗い出しを行い、法改正への動きを着実に加速させてください。昨今とりわけ社会問題となっている精神科病院の場合は、精神保健福祉法による処遇改善請求の仕組みがあるが、請求者が本人と保護者に限定されていることから、虐待を発見した職員やその他関係者が請求できる仕組みにはなっていません。このようにこれまでの虐待防止の枠組みについては脆弱性が指摘されているものも多く、障害者虐待防止法の通報義務の範囲拡大が必要です。
(2)通報者保護についての規定を拡大すること
実態に伴うかたちでの通報者保護をすることが重要です。障害者施設の運営法人が、虐待通報をした職員に対して名誉毀損を理由として、スラップ訴訟をかけてきている事例が起きています。また、障害者虐待防止法が対象とする通報義務以外の場所における通報は、通報者保護の適用を受けないことも問題です。通報者保護についての規定を通報義務の範囲と併せて拡大することが必要です。
(3)障害者虐待の調査機関の独立性を担保すること
障害者虐待防止法の定める通報対応の機関は、各市町村の障害福祉を担当する部局であることから、往々にして利益相反関係が認められるケースもあり、調査に関する独立性の担保に課題があります。障害者団体から人員を招聘するなどして、独立性を担保することが必要です。
(4)障害者虐待防止についての研修実施に障害者団体の意見を踏まえること
障害者虐待防止についての研修は努力義務の範囲にとどまっていることから、虐待防止に関する実効性のある措置に課題があります。研修の構成には障害者団体からの意見を踏まえ、障害者の暮らしにかかわるあらゆる分野・領域で実施をするよう体制を整備することが必要です。
以上