要望書・意見書
■最終更新 2022年3月11日
HOME>要望書・意見書>民事裁判手続のIT化にあたって障害者の利用機会の確保を求める要望
民事裁判手続きのIT化にあたって障害者の利用機会の確保を求める要望
2022年3月11日
法務大臣 古川 禎久 様
日本障害フォーラム(JDF)
代表 阿部 一彦
民事裁判手続きのIT化にあたって障害者の利用機会の確保を求める要望
平素より法務・権利擁護の推進等についてご尽力いただいていることに敬意を表します。
民事裁判手続きのIT化にあたっては、IT機器へのアクセスに困難のある障害者の裁判を受ける権利(憲法第32条)の保障に影響が出ないようにするとともに、わが国が締約国となった障害者の権利に関する条約第13条及び障害者基本法第29条を遵守するために、必要な制度構築がなされなければなりません。
先般、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第23回会議(2022年1月28日開催)においては、民事裁判手続きのIT化に向けて、民事訴訟法の改正要綱案がとりまとめられたところですが、「障害者に対する手続上の配慮」については、要綱案の第3部の第2において、「その他所要の規定を整備するものとする。」との文言により表現され、引き続き検討されることとなっています。
そこで、今国会に提出される民事訴訟法改正法案においては、以下の事項が十分に留意されることを要望します。
記
1 民事訴訟法の総則規定において、障害者に対する手続上の配慮を行うべきことを定めること
障害者が民事事件に関する手続の当事者、証人、参考人その他の関係人となった場合に、民事訴訟法を含む各関連法規において、手話言語を含めた多様な形式による意思疎通手段の提供、点字版、デジタル版、読み易い版による訴訟関係資料の提供といった個々の障害者の特性に応じた手続上の配慮が迅速に提供される必要があります。そのため、民事訴訟法に手続上の配慮に関する総則規定を定めることを求めます。
また、障害者に対して提供される手続上の配慮の内容の決定に際しては、当該障害者の要望(支援者を選択することを含む)が尊重されることについても、明記してください。
なお、手続上の配慮は均衡を失していることを理由に制限されないという点で、これらの配慮は合理的配慮と区別されなければならない(国連障害者権利委員会・一般的意見第6号第51項参照)ことについても、十分に留意する必要があります。
2 障害特性に応じた意思疎通支援者の配置を行うこと
障害者に対して提供される手続上の配慮の具体的内容の一つとして、障害者が民事事件の当事者、証人、参考人その他の関係人となった場合に、個々の障害者の特性に応じた適切な意思疎通支援者を配置し、障害者がその権利を円滑に行使できるようにするための意思疎通の手段を確保することを求めます(障害者基本法第29条参照)。
また、この意思疎通支援者に対しては、障害者権利条約に基づく障害者の人権に関する研修及び適切な手続上の配慮の提供に関する研修プログラムを提供し、これを定期的に実施することを求めます。
3 手続上の配慮のために必要な費用を公費負担とすること
障害者に対する手続上の配慮を提供するために必要な費用については、公費で負担することを求めます。
4 司法手続きにおいて用いられる情報通信システムをアクセシブルなものにすること
司法手続きにおいて用いられる情報通信システムをあらゆる障害者にとってアクセシブルなものにするため、以下の事項を実現することを求めます。
a. 訴訟関係者がインターネットを通じて送受信する方式、または、裁判所が管理する文書データのフォーマットを、視覚障害者、盲ろう者にもアクセシブルな形式とすること。
b. 裁判等の手続きに用いるインターネットを利用したテレビ会議システムを、視覚障害者、盲ろう者にも操作可能な設計とすること。
c. 裁判等の手続きをインターネットを利用したテレビ会議システムで実施する場合、ろう者、難聴者等が手話言語、字幕といった自ら望む意思疎通手段を利用できることを保障すること。
5 弁護士、裁判所職員、裁判官に対する研修を実施すること
弁護士、裁判所職員、裁判官に対し、障害者権利条約に基づく障害者の人権に関する研修及び適切な手続上の配慮の提供に関する研修を義務化し、これを定期的に実施することを求めます。
6 継続的な検討の場を設けること
障害者の司法参加に必要な制度の構築のために、障害者が参加する継続的な検討の場を設けることを求めます。
以上