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■最終更新 2022年12月14日
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国連障害者権利委員会による初回審査の総括所見を受けての声明
国連障害者権利委員会による初回審査の総括所見を受けての声明
日本の第1回政府報告に関する総括所見(確定版)が、国連障害者権利委員会から10月7日に公表された。
この総括所見は、障害者権利条約第36条に基づき、締約国からの報告を権利委員会が審査した結果として示された最終見解であり、日本にとっては2014年の条約批准後初のものである。権利委員会は、審査において、政府代表団との建設的対話を行うとともに、市民社会によるパラレルレポート(代替報告)やプライベートブリーフィング(非公開の意見聴取)等を通じて情報を収集したうえで、この総括所見を決定した。このプロセスは、権利条約がその成立過程から重視してきた、障害者の参加(「私たち抜きに私たちのことを決めないで」の精神)を確保するものとなっている。
その結果、日本への総括所見には、JDFが提示した多くの意見が反映されており、審査の過程における権利委員の真摯な努力に感謝したい。
また審査に向けてJDFとの意見交換を含め様々な形で尽力いただいた日本政府に改めて敬意を表するとともに、一貫して支援いただいている超党派の国連障害者の権利条約推進議員連盟に感謝を申し上げる。
さらに、JDFの取り組みを長期にわたって支えていただいた企業助成財団に、心よりのお礼を申し上げる。
日本への総括所見は、序文、肯定的側面、懸念と勧告、フォローアップ(今後の手続き等)から成り、全19ページに及ぶ。その文章量や、第1条から33条まで全条項に渡って述べられた詳細かつ網羅的な内容は、過去の総括所見と比しても類を見ない。
法制度の人権モデルとの調和、障害認定を含む法令等に存続する医学モデルの見直し、優生思想と戦う観点、入所施設や精神科病院からの地域移行、インクルーシブ教育の推進、国内人権機関の創設や障害者政策委員会の強化など、広範な課題と論点が指摘されており、いずれも条約の理念を踏まえた高い目標を示すものである。
総括所見には法的拘束力はないとされるが、日本は締約国として条約を誠実に遵守すべき責務から、これを尊重することが求められる。国内の現行制度や歴史的経緯に照らし、総括所見に示された目標には国内において十分な議論を要するものもあるが、国は総括所見を全体として目指すべき方向ととらえながら、条約の実施に取り組むとともに、今後とも市民社会との建設的かつ定期的な意見交換を継続することを強く求めるものである。
フォローアップにおいては、この総括所見の内容を国内の各層に伝えていくことが求められており、私たちも国や関係機関、団体等と共にそうした役割を担っていきたい。
JDFでは総括所見の内容の分析と評価について話し合いを進め、今後の行動計画作成に着手している。
今日私たちが享受している諸権利、法制度、バリアフリー化された社会資源などは、先達のたゆまぬ努力によって実現されてきたものである。それらをさらに発展させ次世代に引き継げるよう、私たちは、総括所見を踏まえた条約の実施を通じて、すべての人が住みやすいインクルーシブな社会を目指し、引き続き、幅広い関係者と連携を図り取り組む決意である。
2022年12月6日
日本障害フォーラム