セミナー・学習会
JDF全国フォーラム 資料
障害者差別解消法の課題
太田修平
長かった運動
「親戚の集まりに行けない」「施設や病院に収容され、毎日自由のない生活を送らされている」等々、
障害を持っていると、差別と出くわさない日はありません。
1990年にアメリカでは「障害のあるアメリカ人法(ADA)」が制定された。
60年代からの公民権運動の流れをくんだ、当事者運動の成果でした。
さて実は日本でも、70年代に差別糾弾型の運動は、大きなものとなっていきました。
そういう反差別的な運動が展開する中で、差別禁止法をつくる議論がされていきます。
2009年政権交代で民主党政権が生まれ、権利条約批准に向けた“障害者制度改革”が実行され、
その改革の目玉のひとつに“差別禁止”がありました。
やれることを最大に
「日本において障害者のアパルトヘイトをなくしたい」これは第1回差別禁止部会で私が言ったことです。
部会では様々な意見がありましたが、差別は、障害に基づく「直接差別」だけではなく、
車いすだからとか、盲導犬を同伴しているからなどという「間接差別」や、
家族に障害者がいるなどという「関連差別」も含まれ、
障害者権利条約で示されている「合理的配慮」が提供されないことも入るということでまとまったのです。
部会ではそれを「裁判外紛争解決の仕組み」の必要性も強く指摘され差別を受けた人が訴え出られる場所の設置を提言しました。
しかし、差別解消法では、残念ながら、それは「相談機関」となり、権限が弱められてしまいました。
意識を変えていくために
私たちは3年後の見直しに向けて次への運動を進めていく必要があります。
めざすべきは、「差別を受けたら裁判所に訴え出られる」という裁判規範性ですが、
とりあえず、救済機関というか、部会意見で言うところの「裁判外紛争解決の仕組み」をつくることです。
訴え出る場所がなければ差別解消法の価値は3分の1以下のものになってしまいます。
そして、差別を定義化し、直接差別のみならず、障害に関連した差別もきちんと組み入れていくことです。
国土交通省の対応指針を見ると、不当な差別的取扱いについて、「障害があることのみをもって」、という表現もあり、
この間の議論を踏まえておらず、私としては納得ができません。
今後の見直しに当たっては、差別の定義化は絶対に必要です。
ですから、差別を受けたらいろいろな関係機関、関係者にそのことを伝えていき、
どういう差別が多いのかという具体的なデータが集まるようにすることが大切です。
また各地で条例づくりの運動が進められ、制定されてきていますが、
この運動を広げ、中身のある条例制定も後押しとなります。
差別解消法の施行は小さな一歩かもしれません。
まだ隔離施設や病院がたくさんあり、アパルトヘイトはなくなっていません。
しかし、法律で差別は悪い事と明記されることによって、人々の意識も変わってくる可能性もあります。
法律・制度・意識、あらゆる側面で、人間としての誇りをもって生きていけるようにすることが重要です。