要望書・意見書
■最終更新 2013年4月4日
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国連・障害者権利条約第6回特別委員会の審議に関する要望書
2005年7月19日
外務大臣
町村 信孝 様
日本障害フォーラム(JDF)
代表 兒玉 明
(団体印略)
国連・障害者権利条約第6回特別委員会の審議に関する要望書
貴省におかれましては、国際的な人権の確立、とりわけ障害者権利条約の策定過程に積極的に参画しておられることに敬意を表します。
さて、標記の障害者権利条約の作業部会草案(以下、「草案」と略す)が2004年1月に採択されて以降、草案を審議する特別委員会が3回行われ、本年8月に開催される第6回特別委員会では、後半の条文について2回目の審議が行われることになっています。
第6回特別委員会に向けて、政府内でも意見のとりまとめを進めておられるものと思います。私たちは、貴省を中心に政府が一体となって障害者権利条約に向けて関与していることに対して、その積極性を大いに評価をする一方で、国内における既存の障害者施策の問題点をおざなりにさせることがないように政府とNGOとのパートナーシップを強めていくことを、この条約審議の最中において改めて痛感しております。
つきましては、私たちJDFとして障害NGOの立場から、この草案の各条文について検討を行い、この度、「要望書」をとりまとめさせていただきました。
日本政府におかれましても、日本の障害者団体の主張を十分に酌んだ意見提起を特別委員会で展開していただきたいと願っております。
また、貴省のみならず各省庁におかれましても私たちの意見を共有し、意見提起に反映されるよう強く要望いたします。
<審議予定の各条文に関する要望事項>
■第3条(定義)について
<要望事項>
1.「『コミュニケーション』は、口及び耳によるコミュニケーション、手話によるコミュニケーション…」については、「『コミュニケーション』は、口及び耳によるコミュニケーション、手話によるコミュニケーション、文字表示によるコミュニケーション…」の下線部分を追加する方向で検討していただきたい。
2.「合理的配慮」に関しては、難聴者・中途失聴者の基本的人権の実現として「合理的配慮」を求めるのであり、パブリック・フォーラムを含む公的場面では「配慮要求」ではなく「権利実現」であり、私的場面では障害者の「配慮要求」に対しその実現を抗弁する側が、「過度の負担」を説明、立証する「挙証責任」の転換を条文に明示する方向で検討していただきたい。
<コメント>
・難聴者・中途失聴者は聞こえなくなった年齢により、又聞こえの程度によりコミュニケーション手段が多岐に亘っている。難聴者・中途失聴者は、手話、読話、筆談、補聴器その他の補聴支援システムに加え、要約筆記者の文字通訳や字幕を始めとする文字情報を活用して、個々に工夫しながらコミュニケーションをとっているのが実情である。このような難聴者・中途失聴者の障害はこれまでの障害者権利条約の取り組みの中でほとんど議論されていなかったと思われる。
・国際条約の性格上、手話、点字に言及されている部分については限定列挙ではなく例示規定であるとしても、今後の国内法での具体化を考えたとき例示の意味は大きく、「文字による表示」も追加して例示していただきたい。
・補聴器を始めとする補助具、磁気ループを始めとする補聴支援システムの利用促進についても該当する条文(第13条等)に文言を残し、今後の国内法制定での取り組みに手がかりを残しておきたい。
※第3条(定義)については今回の審議予定の条文ではないが、新しくJDFに参加した難聴者・中途失聴者(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)の立場から、基本的な考え方を各条にかかわる定義に関連して言及していただいた。
■第15条〔地域社会における自立した生活及びインクルージョン〕
<要望事項>
1.条文草案の見出しと柱書きについて、
当該見出しと柱書きの「自立した生活」という表記は、【脚注51】との関連で議論になっているが、障害のある人の地域生活における共通の目標であり、障害者基本法(第1条・目的)の「自立及び社会参加の支援」に合致していることから、同表記は明確に維持していただきたい。
【脚注51】
作業部会の構成員の中には、この条文草案の見出しと柱書きの「自立した生活」という語が、多くの国の文化的規範を反映しておらず、この語が障害のある人がその家族から分離されるべきであることを示唆しているとの懸念を表明した。特別委員会は、代替的な案を検討することを望むかもしれない。
2.(b)項について
「障害のある人が、施設への収容及び特定の生活様式を義務づけられないことを確保する」ための「適当かつ効果的な措置をとる」(同条の柱書き)義務規定は、明確に維持していただきたい。
3.(c)項について
「地域社会における生活及びインクルージョンを支援するために並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な居宅サービス、在宅サービスその他の地域社会支援サービス(人的支援を含む。)を障害のある人が利用できることを確保すること。」の下線部分は、「…在宅サービスその他の地域における社会参加支援サービス(介助・コミュニケーション支援等の人的支援を含む。)を障害のある人が利用できることを確保すること。」に修正していただきたい。
<コメント>
・「地域社会支援サービス」では内容が曖昧なため、「地域における社会参加支援サービス」とし、「人的支援」の部分には「介助・コミュニケーション支援等」を例示することが必要。
・今後、身近な地域において、在宅サービスの基盤整備をはじめ、エンパワーメントを含めた相談援助、住宅の確保、雇用・就労、地域における仲間づくりや余暇活動など、幅広い分野にわたる効果的な支援体制の確保が求められている。
・特に在宅サービスの基盤整備については、本来は法制化が必要な重要事項であり、ニーズ調査に基づく数値目標化とその実施に向けた計画策定が急務である。
※第3回の発言から(長瀬氏のまとめ)
・EUからは、柱書きから「効果的」を削除するという弱める方向の提案が行われた。論点となっているのは(b)の障害者の施設収容、特定の生活様式を義務づけないというサブパラグラフである。(a)が居所、生活様式の選択する平等な機会の確保を規定し、(b)は重複しているとして、削除を求める意見がアルゼンチン、シエラレオネ、カナダ等から出されている。
・ニュージーランドからは「自立」を条文名、条文案から削除する点では後ろ向きだが、他の面では「自律」を強調する積極的な提案があり、後者の点に関しては、WNUSPと国際育成会連盟が支持を表明した。
■第15条の2〔障害のある女性〕
<要望事項>
1.「障害のある女性」については、「障害のある子ども」(第16条)の条文の重要性を踏まえ、原則的にジェンダーのメインストリーミング化という観点から、前文の例示規定に入れるとともに、特別の条項を設ける方向で検討していただきたい。
2.検討にあたっては、「琵琶湖ミレニアムフレームワーク 2 目標」と「韓国提案」(下記、抜粋)の内容に留意していただきたい。
<コメント>
・「障害のある女性」を取巻く状況には、障害を理由とする差別と性差別が密接に関連しあう二重の差別が存在しており、女性差別撤廃条約だけでは解決できない問題がある。
・施設、精神病院、家庭での性的被害・虐待対象者の圧倒的多数は障害のある女性である。加害者の罪の重さは、被害者が障害をもっていようともっていなかろうと差はない。しかし、施設等の閉鎖的な環境で性的関係を強要されてしまうこと、それを明らかにできずに泣き寝入りしてしまうことだけはあってはならない。
・1996年に優生保護法が改正されて母体保護法となり、障害を理由にした本人への同意なしの不妊手術を認める条項はなくなったが、「障害をもっているあなたに子どもをもつ必要はない」「生理介助は大変」などと言い続けたり、「結婚するなら生殖機能を無くしてからに」ということによって本人同意を誘導的に得て、不妊手術に追いつめられる恐れは解消されていない。
・琵琶湖ミレニアムフレームワークの「中間評価」は2007年になっているが、〔2目標〕の女性障害者に関する「目標3・4・5」は、障害関係NGOも含めて取組みがおくれている現状にあり、政府とNGOの共通の課題であることを認識する必要がある。
※琵琶湖ミレニアムフレームワーク 2 目標
〔2 目標〕
目標3:政府は2005年までに、必要とされる分野において女性障害者の権利を守る反差別施策をとるものとする。
目標4:各国の障害者自助団体は、2005年までに、組織の運営、研修・訓練、主張活動を含む諸活動への女性障害者の完全参加と平等な代表権を促進する方針を採用するものとする。
目標5:障害をもつ女性が2005年までに国の主要な一般女性団体に含まれるものとする。
※韓国提案からの抜粋
(a) 障害のある人に関連する法令において障害のある女性の権利の保護に関する個別規定を含めること。
(b) 障害のある女性を社会調査及び統計収集に組み入れ、かつ、障害のある人に関し、ジェンダーに基づくデータを収集する。
(c) 妊娠、出産及び産後のヘルスケア並びに養育保護における障害のある女性の特別なニーズの支援に関する政策及び計画の開発し及び普及
(e) 障害のある女性が、家庭、収容施設及び地域社会における性的搾取、虐待及び暴力から保護されることを確保する。
※第3回の発言から(長瀬氏のまとめ)
・EUはハイリスクの集団としての障害児、障害女性に関する言及は前文で行うべきだとし、障害児と題された第16条にも反対の意思を明らかにした。障害女性に関する独立した条文を支持したのは、アフリカ諸国が多く、南アフリカ、ナミビア、ケニア、ウガンダ、マリ等だった。反対したのは、ヨルダン、ノルウェー、セルビア・モンテネグロであり、障害女性には反対だが、障害児について賛成はイエメン、インド、サウジアラビア等だった。世界ろう連盟、ランドマインサバイバーネットワーク、世界盲人連合そしてアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は全て、韓国提案を支持した。
・なお、この条項に関する議論の中でニュージーランドが、障害者に加えて、家族と介助者に常に言及するという提案(インド等と思われる)に対する懸念を示し、焦点は障害者自身であるべきだと述べているのは注目に値する。
■第16条(障害のある子ども)
<要望事項>
1.草案3項(b)について
「3. 締約国は、インクルーシブ・ケアについての障害のある子どもの権利を認める。この権利は次のことを含む。(a)略
(b) 利用可能な資源を条件として、資格のある子ども及びそのケアに責任を有する者にまで支援を及ぼすこと。この支援は、申請に基づくものであって、支援を受ける資格のある子どもの状況、及びその親又はケアーを行う他の者の事情に適したものとする。」の下線部分については、障害のある子どもへのケアーの重要性の観点から、曖昧さが残る同部分を削除していただきたい。
2.〔草案脚注54〕に基づき、6項を新しいパラグラフとして追加することを検討していただきたい。
◆ 6項の文案
「締約国は障害のある子どもを性的虐待をはじめとする虐待、搾取、遺棄から保護する。締約国は難民生活を送る障害のある子ども及び障害のある孤児をはじめとする弱い立場にある障害のある子どもの権利を確保する。」
〔脚注54〕
この条文草案のパラグラフ2、3及び4は、子どもの権利に関する条約第23条を基礎としている。子どもの権利に関する条約は、その第23条で障害の事項について特に詳しく述べているが、他の条文では障害の事項を取り扱っていない。他方で、この条約草案は、条文草案第16条で子どもの事項について特に詳しく述べているが、その他の条文草案ではまさに障害について取り扱っている。それゆえ、このような相互関係において、この条文草案第16条が子どもの権利に関する条約第23条を再現することは、障害のある子どもが直面する問題を十分に取り扱わないことになるかもしれない。したがって、特別委員会は、障害のある子どもに影響を及ぼす事柄であって、子どもの権利に関する条約で取り扱われていない事項を取り扱うように、この条文草案を再度検討することを望むかもしれない。たとえば、障害のある子どもが性的虐待や搾取を被りやすい弱い立場に置かれていること、難民生活を送る障害のある子どもや障害のある孤児が弱い立場に置かれていることなどが含まれ得るだろう。
※第3回の発言から(長瀬氏のまとめ)
・問題の多い条文である。作業部会草案の2、3、4項は子どもの権利条約の、障害児に関する32条に基づいている。論点となっているのは、(1)そもそも障害児に関する独立した条文が必要か、(2)必要とした場合、現在のように子どもの権利条約をベースにしたもので十分か。EUは、現在の条文案は内容的に何も新たに付け加えていないとし、前文での障害児への言及を提案し、本条の削除を求めた。イスラエルも同様の立場を示した。ニュージーランドも現在の条文案には不満を示し、拒絶や放棄など障害児の特別弱い立場に配慮した条文の可能性を提示した。
・NGOをはじめ、大勢は子どもの権利条約をベースとするのではなく、虐待や搾取をはじめとする障害児特有の問題に焦点を当てて、条文を格段と強化すべきという意見だった。
■草案第17条(教育55)
<要望事項>
1.【草案脚注55】について
「特別委員会は、この条文草案が、他の条文草案の訓練に関する規定とともに、訓練をより強調して取り扱うべきか否かを検討することを望むかもしれない。」(脚注55)について、第17条は、あくまで教育だけに焦点を絞るべきであり、「訓練」は第22条(労働の権利)など他の適切な条文で取り上げていただきたい。
<コメント>
・社会権規約第13条は初等教育から高等教育について言及しているものの職業訓練についてはふれていない。子どもの権利条約第28条(教育)では「職業に関する情報と指導」についてふれている。論点となっているtrainingが教育と区別すべきことがらかどうか検討すべき。
2.1項について
前文の後半及び(a)~(c)の教育の目的に関する事項は、「子ども」に限定されるものでないことから、第17条全体を、生涯学習を含む成人にも適用するものとして見直していただきたい。
3.2項(a)について
「(a) 障害のあるすべての人が、自己の属する地域社会において、インクルーシブでアクセス可能な教育を選択することができること(幼年期及び就学前の教育の利用を含む)。」の下線部分「選択することができる」について、EU提案では「利用することができる」という修正案が出されている。
しかし、「選択する」という文言は、3項(c)との関連があり重要であるため、残す方向で「選択し利用することができる」という修文等も含めて検討していただきたい。
また、(幼年期及び就学前の教育の利用を含む)の( )の中に、「高等教育、社会教育」を入れていただきたい。
4.2項(b)について
「2. この権利を実現するため、締約国は次のことを確保する。(a)略、 (b) 必要とされる支援(教員、学校のカウンセラー及び心理学者の専門的研修、利用可能な履修課程、利用可能な教育の媒体及び技術、代替的及び拡大的なコミュニケーション様式、代替的な学習計画、利用可能な物理的環境、又は障害のある学生の完全な参加を確保するための他の合理的配慮を含む。)を提供すること。」の下線部分については、「手話、点字、文字による表示を含む利用可能な教育の媒体及び技術、代替的及び拡大的なコミュニケーション様式」のように「手話、点字、文字による表示を含む」を追加した修文を検討していただきたい。
<コメント>
・手話には、は言語自体であるとともに、手の動きや顔の表情等によって言語を表記する表現様式の二つの意味が含まれる。
・「インクルーシブでアクセス可能な教育」が質的に貧しいものであってはならない。たとえば通常の学校に通学しても、学習の内容が適切でない場合は子ども(障害のある人)は不利益を被ることになる。
・(b)項は「インクルーシブでアクセス可能な教育」に必要な、合理的配慮を含む支援について述べている。つぎの事項「無償の義務教育」との関係でいえば、必要な支援は公的に無償であるべき。
5.3項(c)について
「(c) 一般制度か特別制度かを十分な説明に基づいて自由に選択することを認めなければならない。」を削除するというEU提案について、日本政府は賛成しているが、(c)の「十分な説明に基づいて自由に選択」は非常に重要であることから、この条文のまま条約に盛り込む方向で再検討していただきたい。
<コメント>
・「選択する権利」には、原則的に例外は認められない。認める場合があるとすれば、子どもの最善の利益に反することが明らかな場合等、例外にあたる基準または要件を明確にする必要がある。
・3項柱書きの「代替的学習形態」を必要とする人は、感覚障害(視覚及び聴覚)に限らないことにも留意すべきである。自閉症や学習障害などについても、特別な学習方法が提起されている。また知的障害についても、「ゆっくり学ぶ」ことが保障される必要がある。
・同項の(b)(d)「子ども」「学生・生徒」は、「障害のある人」としてよいのではないか。
その上で、中等教育、高等教育などで生じる具体的な差別について、改善策を提起すべきではないか。
6.4項について
「手話又は点字に通じた教員の確保」については、「手話、読話又は点字に通じた教員の確保」の下線部分を追加していただきたい。
<国内の実態に関するコメント>
・障害のある児童生徒への教育は、日本では「特殊教育」と呼ばれ、特別な場所で行われてきた。特別な場所での教育は、各障害には訓練等を含む特別な指導が必要であり、そのことによって障害が軽減され、就労や社会での独り立ちが可能になるという考え方に基づいている。
・こうした分離教育は、障害のある子どもや親にとって、納得して選択されたものでなかったことも少なくない。地域の中で生まれ育ってきた子どもが、異なる場所に分けられることに、当事者と親は学校を主体的に選ぶことが制度上認められていないことに疑問を感じていることが少なくない。
・現在、障害種別の多様化によって、「特別支援教育」の必要性が打ち出されているが、基本的に障害のある子どもと親が通常学級への就学を希望した場合の制度上の支援は行われていない。
※第3回の発言から(長瀬氏のまとめ)
・EUは、地域でのインクルージョンを選択できるとしている第2項(a)を対象とする第2項柱書全体を努力義務にする骨抜きの提案を行った。また、第3項(c)では、「一般制度か特別制度かのいずれかを十分な説明に基づいて自由に選択することを認めなければならない」とあるのを「十分な説明に基づいて自由に選択する」を削除する提案を行った。日本は基本的にこうしたEUの修正提案を支持した。第3項(c)に関してはEU提案を支持した上で、「障害のある生徒の最善の利益を慎重に検討の上」の追加を提案した。
・【脚注55】が取り上げている、訓練を条文名に加えるかどうかに関しては、オーストラリア、南アフリカ、ウガンダ、イエメン等が訓練を加えるべきだとした。
・第3回特別委員会会期中にNGOコーカスとしての条文案がまとまったのは教育の第17条に関してだけだった。これは、教育に関する障害者NGOの意見がまとまっているためではなく、逆に教育が最も深刻な対立点であり、各NGOの関心が深いために起こった現象である。その対立とは、主に肢体不自由者を代表するDPIと知的障害者を代表する国際育成会連盟が全面的なインクルージョンを主張してきたのに対して、世界ろう連盟、世界盲人連合、世界盲ろう者連盟がろう児、盲児、盲ろう児については、ろう学校、盲学校が選択肢としてなければならないという主張を行ってきたことである。
・その対立を解消するために、多くの対話が行われてきた。その対話がひとまず実ったのがNGOコーカス案であり、以下に主要変更部分を紹介する。作業部会草案との主な違いは(1)2項(c)で、「治療を強制されないこと」を盛り込み、(2)ろう学校、盲学校を念頭に特別教育をあくまで代替的なものと位置づけた第3項を削除、(3)盲、ろう、盲ろうを感覚障害として一括りにしてしまっている第4項を大幅に修正し、主に(a)でろう教育、(b)で盲教育を規定した。
・以下のNGOコーカス提案は第4回特別委員会に向けて、メールを使ってさらにコーカスのメンバーで議論を積み重ねている最中である。
*第17条 NGOコーカス提案
1. 略(作業部会草案に大きな修正なし)
2.この権利を実現するため、締約国は次のことを確保する。
(a) 、(b)、(c) 略(作業部会草案に大きな修正なし)
(d)いかなる障害のある子どもも、インクルーシブかつ完全な、良質な教育への条件として、いかなる実際上又は認知上の機能障害をも矯正し、改善し又は緩和することを目的とする医学的治療又は介入を要求されてはならない。
3. 締約国は、以下を確保するものとする。
(a) ろう及び盲ろうの子ども及び若い人は自らの集団で教育を受け、手話及び自国の音声・書記言語のバイリンガルとなる権利を有する。また、他の外国語(手話及び音声・書記言語両方)を学ぶ権利を有する。各締約国はろう教員及び手話に精通した聴教員の雇用を確保することにより、手話を用いる質の良い教育を提供するための立法上、行政上、政治上その他の措置をとる。
(b)盲、弱視、及び盲ろうの子ども及び若い人は自らの集団で教育を受け、点字又は、かつ、支援機器を含む代替的形式を通じた教材を得て、読み書きの能力、及び数学・地理・化学の技能を獲得する権利を有する。この権利には、コミュニケーション技能を教える能力を持ち、盲人・弱視者・盲ろう者の独自のニーズに関連する研修を受けた教員によって提供される教育を受ける権利も含まれる。
4. 略(旧5を多少修正)
■第18条〔政治的及び公的活動への参加〕
<要望事項>
「政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することができる環境を積極的に促進すること。」(作業部会草案第18条(a)項に関連して)
1.障害の状態に応じた投票の手続や設備に配慮し、障害のある人が政治的及び公的活動に効果的かつ完全に参加することを確保すること、または、必要に応じて投票についての支援を提供することを条文に明示していただきたい。
2.「公的活動」については、広い意味での参政権と公務就任権とは深い関連性があることを踏まえて、次の点について検討していただきたい。
(1)公務就任権については、官公庁における障害者雇用の別枠採用の促進との関連で、雇用における合理的配慮の明確化を含めて検討する必要があること。
(2)国や自治体における障害のある人の生活領域にかかわる審議会や障害者計画の検討委員会に当事者が委員として参画する場合の、基本的な情報保障やコミュニケーション等に必要な具体的支援を確保する必要があること。
<国内の実態と例示>
選挙を行う場所や選挙を行う方法等によっては、実際上、障害のある人は選挙権を行使できない状態におかれている。
・バリアのある建物での選挙
・投票を筆記に限定する選挙方法
・選挙に関する情報が視覚や聴覚に障害がある人に利用しにくい
・選挙公報の内容が知的に障害のある人に理解しにくい
・障害の状態によって外出が困難な状況にあるときに、一律に必ず投票所でなければ投票を認められないとされた場合。
・成年被後見人は、選挙権、被選挙権が認められていない。成年後見は、主に重要な財産管理についての能力がないと判定されているだけで、その状態が必然的に、地域や国のあり方について当事者なりの見解をもち得ないことまで意味するとは限らない。
■第19条〔アクセシビリティ(利用可能性)〕(第20条〔人のモビリティ〕を含む)
<要望事項>
1.現状においてアクセシビリティの確保という点で公共部門よりはるかに遅れているといわざるを得ない民間部門において、実質的に改善するための方向性を社会的に確立するために、事業者に対しては、すでにある基準設定にとどまらず、最低限、報告などの説明責任を課す程度の施策が必要であるという観点から、政府の施策上の義務を一定程度明らかにする規定を検討していただきたい。
2.同条において、アクセシビリティ確保のための仲介者として、すでに出ている手話通訳者などのほかに文字通訳者を付け加えていただきたい。また、中途失調者・難聴者のニードをする保障観点から、公共の建物および設備でのアクセシビリティ確保のために補聴システム整備も含めることを検討していただきたい。
3.20条の柱書きにある「最大限可能な」という表現は、曖昧な意味を含むため削除し、 「障害のある人の自立を伴った移動の自由を確保する」という修正を検討していただきたい。
<コメント>
・公共部門の範囲については議論の余地があるが、民間部門の中でも公共部門のアクセシビリティ確保については、「効果的な措置を取る」程度の規定は必要である。
・ また、現状においてアクセシビリティの確保という点で公共部門よりはるかに遅れているといわざるを得ない民間部門において、実質的に改善するための方向性を社会的に確立するために、事業者に対しては、最低限、報告などの説明責任を負わせる程度の施策が必要である。
※第3回の発言から(長瀬氏のまとめ)
・障害分野に特有の条文である。論点となっているのは出来るだけ詳細に規定いていくのか、それとも、原則的なものを盛り込むかである。EUは後者を支持した。日本は、政府の役割はあくまで民間企業に助言することであるとした。
・クウェートの草案2項(b)を分割、(i)は「ライブ支援」とし、(ii)は手話通訳者に関する規定とするという提案は、主な障害者NGOからの支持を得た。
■第21条〔健康及びリハビリテーションに対する権利〕
<要望事項>
1.「子どもの権利条約」において「教育、訓練、保健ケア・サービス、(リ)ハビリテーションサービス、雇用準備…」(第23条3)と並列的に規定されていることを踏まえ、次の方向で検討していただきたい。
(1)「(リ)ハビリテーション」は、「保健ケア・サービス」にくわえ、「教育」、「訓練」、「職業」などにも密接に関連していることから、「健康」との関連のみに限定されるべきではないこと。
(2)「リハビリテーション」は、とかく医学領域の「機能回復訓練」と同一視されがちなことから、そうした一般的な誤解を避ける意味でも「リハビリテーション」を「健康」から分離し、独立した条文として規定すべきであること。
<コメント>
・生きる技術獲得という意味でのリハビリテーションは医学的リハビリテーションに限らないので、リハビリテーションと健康の二つに分けることが重要。
・中途障害でない障害者にとっては、生きる技術を再獲得するというリハビリテーションは不適切であり、技術獲得という意味ではハビリテーションであるという視点が必要。
締約国は、障害のあるいかなる人もこの権利を奪われないことを確保するために努力するものとし、また、障害のある人が保健サービス及びリハビリテーションサービスを利用することを確保するためのすべての適当な措置をとる。
2.草案の(k)項「希望に基づかない医療及び医療関連の介入及び矯正手術が障害のある人に強制されることを防止する。」を次のように修正していただきたい。
「(締約国は)障害のある人が、特定の(保健サービスあるいは)(リ)ハビリテーションサービスについて十分納得するまで説明を受け、質問し、その上でそのサービスを受けるかどうかについて自分自身の判断で決定する権利を有することを認め、それを障害のある人本人・家族ならびにサービス提供者に周知徹底させるよう努力する。とくに本人の自己決定や希望に基づかない(医療や矯正手術等を含む)サービスを禁止する。」
<コメント>
保健サービスやリハビリテーションサービスは、障害のある人の自己決定に基づいて提供されるべきであり、その自己決定を可能にするには、当事者が十分納得できるよう必要な情報が提供されることがきわめて重要。
3.(g)項の次に、下記の新しい条項の追加を検討していただきたい。
◆新しい条項の案
「保健サービスあるいはリハビリテーションサービスに従事する者に障害およびそれへの対応についての最新の知識が普及されるよう努力する。」
<コメント>
・一般医療関係者ばかりでなく、保健サービスおよびリハビリテーションサービス従事者自体も障害に関する知識を必ずしも十分持っていないのが現状であり、その現状を打開する必要があるため。
※第3回の発言から(長瀬氏のまとめ)
・脚注74で述べられているように、健康とリハビリテーションを同一の条文で扱うべきかどうかが論点となっている。これはリハビリテーションをどの程度まで広がりを持ったものとして考えるかと密接に関連している。
・イスラエルとインドが健康とリハビリテーションをそれぞれ取り扱う条文案を提案し、大多数の国が分割を支持した。EUは21条のリハビリテーションは、医療的リハビリテーションだけに限定すべきだとした。国際リハビリテーション協会(RI)をはじめとする多くのNGOも分割を支持した。
・ニュージーランドが行った(j)項でのインフォームドコンセントをさらに強化するために、「個別の医療行為」を挿入するという提案は、RI、WNUSPによって支持された。
■第22条〔労働の権利〕
<要望事項>
1.草案の柱書きの下線部分を下記のように修正していただきたい。
「締約国は、障害のある人の労働の権利を認める。この権利は、障害のある人の平等な機会及び取扱いを促進するため、障害のある人が自由に選択し又は引き受けた労働を通じて生計を立てる機会を含む。締約国は、この権利を保護するための適当な措置をとる。この措置は次のことのための措置を含む。」
◆修正案
「…締約国は、この権利を保護するための適当な措置をとる。また、代表的な使用者団体及び労働者団体並びに代表的な障害当事者団体及び障害関係団体はこの措置の実施に関して協議を受ける。この措置は次のことのための措置を含む。」
<コメント>
障害者の職業リハビリテーションおよび雇用措置を効果的に推進するにあたって、労使の代表的な団体および障害当事者および障害関係の代表的な団体がその協議に預かることはきわめて重要であり、国際労働機関(ILO)の「職業リハビリテーションおよび雇用(障害者)に関する条約」(第159号条約)第5条にもそのことが謳われている。
2.(a)項について、下記の下線部分を追加していただきたい。
「障害のあるすべての人に開かれ、インクルーシブであり、かつ、利用可能な労働市場及び労働環境を促進すること」
◆追加案(下線部分)
「…労働市場及び労働環境を促進すること。また、締約国は、障害者の労働市場における就業状態を示す基本的指標として、「障害者就業率」(労働年齢期における障害者人口のうち、働いている障害者の比率)などの統計を作成すること。」
<コメント>
・障害者数等の保健統計はあっても、障害者の就業・雇用統計を作成している国は非常に少ないのが現状。障害者の就業・雇用状況を改善するためにも、その就業・雇用実態を把握することは、きわめて重要。
・近年、EUの雇用戦略では、従来の「失業率」の低下に代えて、「就業率」を上げることを目標にしている。そこには、障害者の場合もあてはまるが、さまざまな理由から非労働力化している人びとをできるだけ労働市場に参加できるようにしよう、あるいは、仕事を通じて万人を社会に統合しようという発想があり、その目標の基本指標として「就業率」を使用、その結果も公表している。
3.(d)項については、下記の修正案(下線部分)を検討していただきたい。
「使用者が、積極的差別是正措置、奨励制度及び割当制度等を通じて、障害のある人を雇用することを奨励すること。」
◆修正案(下線部分)
「使用者が、「障害のある労働者と他の労働者との間に機会及び待遇の実効的な均衡を確保するための積極的措置をとること」を通じて、障害のある人を雇用することを奨励すること。」
<コメント>
具体的な措置を例示することについては、賛否両論があることから、むしろ包括的な表現にしたほうがよいこと、また、ILO第159号条約第4条にも同様の表現が含まれていることから、国際的同意が得やすいと思われる。
4.(e)項の「合理的配慮」と差別の定義(第2条、第7条)との関係については、法的基準を設ける必要性、または、少なくとも関連する事例への解釈等を含む対応可能なガイドラインの策定の必要性を積極的に検討していただきたい。
<コメント>
・「合理的配慮」と差別の定義(第2条、第7条)との関係は、非常に重要な論点であり、事業者側の「合理的配慮の欠如」が事例によっては、直接差別と間接差別のどちらに該当するかという判断が求められることが少なくない。間接差別を削除した場合、限られた一部の意図性が明確な直接差別しか扱えないことになり、実効性に乏しい。
・障害を理由とするあらゆる形態の差別に間接差別を含める(第7条)という枠組みの中で、職場及び労働環境の実態に即した間接差別に関する判断基準の検討が必要である。
5.(g)項について
(g)で扱われている職場復帰の場面で実をあげるためには、障害者となってからの生活訓練や職業訓練などのための休暇制度、収入(所得)の維持、職場におけるポストの確保などが不可欠である。締約国は、こうした制度を整備するために役立つ方策を確保するという趣旨の条文の必要性について検討していただきたい。
6.(h)項については、追加案(下線部分)の内容を検討していただきたい。
「雇用、職務継続、昇進、労働条件(同一価値の労働についての同一報酬及び平等の機会を含む。)及び苦情処理に関し法律を通じて障害のある人を保護すること並びに障害のある人による労働の権利及び労働組合の権利の行使を確保すること。」
◆追加案(下線部分)
「…及び苦情処理に関し法律を通じて障害のある人を保護すること、職場における障害を理由とする嫌がらせを禁止すること並びに障害のある人による労働の権利…」
<コメント>
職場おいて同僚などによる障害ハラスメントに悩む障害者が少なからずいる実態があることから、そうしたハラスメントから障害者を守るためには、こうした規定が必要と思われる。
<その他の条項に関するコメント>
・(h)項に関連して、ドイツの重度障害者法(現在は社会法典第7編)における重度障害者代表による障害労働者の保護、権利擁護に関するシステム(経営協議会制度との関連もあるかもしれないが)の例を参考にしながら、障害労働者の職場における権利擁護の必要性が出るような条文にできるとよい。
・(i)公的部門の雇用については、規定が必要である。公的部門が率先垂範して障害者を雇用していくことが民間における雇用機会の確保、推進にとって有効である。
・ILOが指摘するような、いわゆる福祉的就労機会の保障についても言及する条文が必要と思われるが、その場合には所得保障(草案第23条)の見直しと整備を合わせた検討が必要である。
■第23条〔社会保障及び十分な生活水準〕
<要望事項>
1.1項(a)については、下記の修正案を検討していただきたい。
「障害のある人が、障害と関連のあるニーズにとって必要なサービス、機器その他の支援を利用することを確保するための措置」
◆修正案(下線部分)
障害のある人が、障害と関連のあるニーズにとって必要な介護、所得保障、生活支援その他自立のための適切なサービス、機器(福祉用具等)その他日常生活を営むのに必要な支援を利用することを確保するための措置。
<コメント>
原文は、表現がありまいでこのままでは実効性がない。できるだけ多くの例示をも設けて政策の計画・評価に使えるようにすることが必要。
2.(c)項について
「困窮状況で生活している、重度の及び重複した障害のある人並びにその家族が、障害と関連のある費用(十分な研修、カウンセリング、財政援助及び休息介助(レスパイト)を含む。)を賄うための国の援助を利用することを確保するための措置(これは自己を発展する意欲を阻害するものとなってはならない。)」の下線部分を下記のように修正していただきたい。
◆修正案
「障害のある人が、障害と関連のある費用(十分な研修、カウンセリング、財政援助及び「介助者休息」(レスパイト)、福祉用具及び交通(費)、医療(費)を含む。)を賄うための国の援助を利用することを確保するための措置(これは自己を発展する意欲を阻害するものとなってはならない。)
<コメント>
ここで挙げられたような援助は、特定の障害者および家族だけでなく、すべての障害者(レスパイトにおいては家族を含む)が利用できるようにすべきである。
■第24条〔文化的な活動、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加〕
<要望事項>
1.第1項(c)においては、聴覚障害者の「字幕及び手話」と並んで、視覚障害者の「音声解説サービス」も例示として盛り込んいただきたい。
<コメント>
米国、英国、韓国などで具体化しつつあり、とりわけ日本の現状が後れていることが顕著になっている。具体化しつつある国の状況を参考にし、政府がカバーすべきものと民間が行うべきものを整理する必要がある。
2.スポーツ・レクリエーションと並んで、旅行の自由、宿泊の便宜などについて、他の条文でカバーできない場合には、この条文で盛り込むことを検討していただきたい。
※第3回の発言から(長瀬氏のまとめ)
・文化的な活動とレクリエーション・レジャー・スポーツが一つの条文となっているため、このままにするか、分割するかが論点となっている。分割を提案しているのは、イエメン、南アフリカ、ランドマインサバイバーネットワーク、世界盲ろう者連盟盟等であり、分割に反対しているのは、ニュージーランド等である。
・もう一つの論点は3項のろう者の文化的及び言語的アイデンティティの承認である。EU、日本、中国が反対しているが、世界ろう連盟はこの条文の重要性を強く訴え、ニュージーランドも支持している。
■第24条の2〔国際協力〕
<要望事項>
1.国際協力については、条文に取り上げること自体が重要である。メキシコ提案(下記の「※参考」参照)をもとに、日本政府として積極的なスタンスで議論に参加していただきたい。
2.現在の政府開発援助の問題点は、障害者だけを対象にした事業と、一般的な事業が乖離し、後者における障害者への配慮が欠けている点にある。障害者を対象とした国際協力事業だけでなく、一般住民を対象とした国際協力事業の恩恵にも障害者が浴しうるようにするため、バリアフリーガイドラインの策定と遵守を国際協力の原則とすることを条文として提案することをご検討いただきたい。
<コメント>
・ 国際協力機構は2003年に「課題別指針―障害者支援」を作成し、「国際協力の実施においては、障害のある人ののエンパワーメントと一般の政策や支援プログラムに障害の視点を加えるメインストリーミングのツイントラック・アプローチを推進することとしている。
・第1に同指針で示されたツイントラック・アプローチの実施を確実にし、つまり、(1)障害のある人の完全参加と平等実現を目的としたものにあわせ、(2)一般公共政策や一般住民を対象としたものについても、障害のある人たちの参加、利用を前提とすること。
そして、(2)を推進するためにも、アクセシビリティ基準(またはバリアフリー
ガイドライン)をつくること。その基準を踏まえて国際協力プログラムをすすめるべく、国際協力にかかわるすべての関係者にその基準を周知させるための研修などを実施すること。
・第2に国際協力プログラムの企画およびモニタリングへの障害当事者団体代表などの参加の確保が重要であること。障害のある人たちが、国際協力プログラムの受益者となるためには、障害当事者の視点が反映されるよう、その企画およびモニタリングへの参加確保 が不可欠である。
※第3回の発言から(長瀬氏のまとめ)
・作業部会での国際協力に関する議論のまとめ役を務めたメキシコから第24条の2が提出された。(下記は、詳細なメキシコ案の柱書き)
「締約国は、連帯の精神において、この条約の実施のための不可欠な要素として国際協力に従事するものとする。締約国は、政府のあらゆる段階において、国際機関、地域機関、専門機構、障害のある人の団体、非政府団体、国内人権機関その他の国内機関、民間部門、金融機構及び他の関係主体との知識及び経験の交換並びに国際協力を奨励し及び支援しなければならない。」
・日本を含む圧倒的多数の国、発言した全NGOが独立した国際協力に関する条文に賛成した。
■第25条〔モニタリング〕(監視)
● 国内モニタリング(監視)
<要望事項>
1.1項について:「締約国は、この条約の実施に関連する事項についての中心的な活動機関を政府内に指定するものとし、また、多様な部門及び多様な段階において関連のある活動を推進するため、調整機関の設置又は指定について正当に考慮する。」
政府部内のどこに調整機関を置くべきか明確にするとともに、調整機関に当事者の意思を反映させていくこと。障害者の権利条約では、少なくとも外務省の所轄部局と内閣府の障害者施策推進本部が政府内の総合的調整機能の役割を果たし、NGOの参画と意見を反映するための協議機関を設置する方向でご検討いただきたい。
2.2項について:「締約国は、その法的及び行政的な制度に従って、この条約で認められた権利の実施を促進し、保護し及び監視するための枠組を国内で維持し、強化し、指定し及び設ける。」
「国内人権機関に関するパリ原則」(1993年)の主旨を踏まえて、第1に行政機関からの独立性と当事者性(委員構成における障害NGO委員の積極的な参画等)が確保され、救済を含めた条約の実施状況に関する監視を行うための仕組みを明確にすること。第2に実効性のある権限と役割をもたせるために、権利侵害の救済を明記した監視・救済委員会の設置法が必要であるという観点からご検討いただきたい。
● 国際レベルのモニタリング(監視)
<要望事項>
1.現在、条約体改革議論が国際レベルで進められ、既存の諸条約の目的達成を図る上でのモニタリング(監視)の合理化の必要性には一定の認識をもつが、本来は目的達成に向けて、人的資源や予算の増強を行い、条約の目的達成を目指していくことがモニタリングの望ましい姿である。人権条約体の実効性と合理性(効率性)との両方の観点から、障害者権利条約の国際モニタリング(監視)を設けるという結論を日本政府としてもつ方向でご検討いただきたい。
2.障害者の権利条約を本当に履行させていくためには、実施措置の規定によって「障害者の権利条約に関する委員会」を設置するというのがベストであるという観点から、その審議にあたっては、次の点が明記されるようご検討いただきたい。
(1)NGOと関係機関を報告審査の中に位置づけることを条約に明記をすること。
(2)審査にあたる委員の審査にあたっては、だれが委員になるのか、障害のある当事者委員を参画させること。そうでないと提起される問題の意味も伝わらない。
(3)委員をサポートする機能が必要。その場合には、人権高等弁務官事務所でいいのかということも含めて、既存の条約のモニタリングを行う他の委員会と分断されない仕組みが大切であり、それに伴う資金の確保も必要である。
(4)審査にあたる委員に対して、どのような形で情報提供すればいいかを条約に明記すること。
以上