要望書・意見書
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障害者自立支援法の成立に伴う緊急要望書
2005年11月30日
厚生労働大臣
川崎 二郎 殿
日本障害フォーラム
代表 小川 榮一
障害者自立支援法の成立に伴う緊急要望書
平素より、障害保健福祉分野に強い関心をお持ちいただき、またその施策の増進にご尽力いただいていることに対し、心より敬意を表します。
さて、障害者自立支援法の成立が成った今、私どもの最大の関心事は、装いも新たとなる各種事業にどの程度の予算が確保されるのか、また関連する政令や省令、実施要綱等がどのように形づくられていくのか、これらに集まっています。
つきましては、下記の諸点につきまして特段の配慮をいただきたく、ここに緊急に要望するものです。障害のある人びとの「自立支援」を名実ともに実質化させていくためにも、何卒よろしくお願いいたします。
記
I. いわゆる「三位一体政策」に関する要望事項
障害保健福祉施策は、障害者自立支援法の成立に伴って抜本的な転換が図られようとしている。こうした折に、支援費(障害保健福祉サービス事業関連費)ならびに施設整備等に関する負担金・補助金が「三位一体」に組み込まれることは絶対に容認できない。障害者自立支援法に伴う基幹的な施策については、国の財政責任で遂行されるべきである。
II. 平成18年度政府予算案編成に関する要望事項
1、自立支援給付(義務的経費)に要する費用について、必要かつ十分な財源を確保すること(介護給付費、訓練等給付費、自立支援医療費、補装具等)。
2、裁量的経費である地域生活支援事業(市町村が実施主体となる裁量的経費)については、財源面での不安定さが懸念され、その重要性からみて予算確保にあたって特段の配慮をはかること(相談支援・移動支援・コミュニケーション支援・日常生活用具、地域活動支援センター等)。
3、地域生活を支援するための物的ならびに人的なサービス基盤について、これを飛躍的に拡充するための法的な根拠を備えた特別の策を講ずること
4、附則で明記された「障害者の範囲」(第三条1項)ならびに「所得の確保」(第三条3項)の検討については、予算確保を含めて速やかに検討体制を整えること。
III. 国会での附帯決議等に関する要望事項
衆議院での「附帯決議に関する申し合わせ」(10月28日)ならびに参議院での「附帯決議」(10月13日)、衆議院・参議院での政府答弁については、これらを確実かつ速やかに具体化すること。
IV. 政令、省令等に関する要望事項
1、利用者負担について
1)障害福祉サービス及び自立支援医療の利用者負担の上限を決める際の所得の認定にあたっては、障害者の自立の観点から、生計を一にする世帯の所得ではなく、障害者本人の所得のみとすること。
2) 障害福祉サービス及び自立支援医療、補装具の複合利用にあたっては、その合計負担額が過剰とならないよう、何らかの軽減策を講じること。
3)就労関連事業の利用にあたっては、就労意欲の増長の観点から、現行の支援費制度と同程度以上の工賃控除を行なうこと(現行の工賃控除は年額288,000円)。
4)自治体の代理支払制度、委任払い制度等を導入し、利用者の便宜を図ること。
2、新規事業・施設制度について
1)各種新規事業の職員配置基準(報酬基準)については、現行の同類事業の水準を下回らないこと。
2)事業所側による利用者の「逆選択」を防止する観点から、報酬単価を日割計算方式とするのではなく、現行どおり月割計算方式を原則とすること。
3)グループホームへのホームヘルパーの導入にあたっては、事業所に対する補助金の加算制度を設けること。また、グループホームならびにケアホームの設置場所については、地域生活の推進という観点から医療機関・入所施設の敷地内での設置を認めないこと。
3、自立支援医療について
1)医療上の必要性から継続的に相当額の医療費負担が発生する者への月ごとの負担上限の範囲については、法の施行前に適切に対応するとともに、施行後も必要な見直しを図ること。
2)「重度かつ継続」の範囲の検討に当たっては、国際基準に沿うものとし、とくに当事者団体の意見を尊重すること。
3)自立支援医療のうち育成医療については、国会答弁を踏まえて、適切な水準を制度化すること。
4、障害程度区分について
1)障害程度の認定にあたっては、障害の特性ならびに環境因子等を十分に配慮すること。
2)障害程度区分については、社会生活を主体とした調査項目とするよう、さらなる改善を図ること。また、施行後も実施状況をみながら早い段階での見直しを行うこと。
3)調査員や医師等に対し、定期的な研修の実施やガイドラインを提示すること。
4)知的障害者ならびに精神障害者の障害認定にあたっては、本人の状況を勘案した上で成年後見人又は本人を良く知る者の同席も可能とすること。
5、市町村審査会について
1)審査会には、障害保健福祉分野についての知識と経験を有する障害当事者を積極的に登用すること。
2)二次判定において、障害実態を的確に把握するために、環境要因やサービス利用状況(試行事業で言う概況調査)を積極的に活用するとともに、医師の意見は最小に留めること。
3)審査会において二次判定ならびに「非定型のサービス利用者に対する審査」についての検討が行われる際に、本人が希望する場合は審査会に出席できるものとすること。
4)二次判定ならびに「非定型のサービス利用者に対する審査」にあたっては、一次判定以上に個人情報が関与してくることを鑑み、個人情報保護の観点からの手続き規定を設けること。具体的には、「非定型の支給決定」について市町村が審査会に意見を求める場合は、本人の意志確認(同意書方式など)と提出資料の本人への開示を義務づけること。
6、重度障害者の介護保障について
1)重度訪問介護の報酬基準については、サービス提供者を確保するという観点から現行基準をさらに引き上げること。2)重度障害者等包括支援の基準単価は、支援内容の複雑さ等に鑑み、身体介護並みの時間単価とすること。
3)在宅系の重度訪問介護・居宅介護・通所介護における市町村での予算執行にあたっては、障害程度区分間の流用を弾力的に行なえるようにすること。
4)地域生活が立ち行きにくい一人暮らしの重度障害者に対して、特別な国庫補助基準を設けること。
7、補装具・日常生活用具について
視覚障害者ならびに聴覚障害者、盲ろう者の社会参加を進めるため、日常生活用具給付事業の対象の拡充を図ること。とくに、通信ネットワークを利用した情報コミュニケーション支援を推進すること。
8、移動介護について
1)地域生活支援事業における移動介護の支給決定に際しては、当事者もしくは関係者からの利用意向を十分聴取し、支援費の支給決定で使われている勘案事項を踏まえて決定すること。
2)利用者の便宜を図る観点から、サービス決定の期間(量)を月単位とするのではなく、年単位とすること。
3)視覚障害者や盲ろう者等、比較的数の少ない障害者に対しても適切なサービスが供給できるよう、確実な体制整備を図ること。
4)サービス提供事業者の指定に当たっては、適正さと質を担保する観点からの方策を講ずること。
9、コミュニケーション支援について
1)手話通訳と要約筆記ならびに触手話、指点字等を同格と位置づけ、その質と量を確保するための必要な体制整備を図ること(地域生活支援事業に関するガイドライン作成にあたって、この点を留意すること)。
2)聴覚障害者情報提供施設をコミュニケーション支援事業に位置づけること。
10、相談支援事業所について
市町村の相談支援事業の推進にあたっては、市町村障害者生活支援事業、障害児(者)療育等支援事業、精神障害者地域生活支援事業を中核として展開すること。
11、小規模作業所について
新たな事業体系への移行を希望する小規模作業所に対して、障害者基本法の関連条項をも配慮しながら、スムーズな移行が図られるよう必要な措置を講じること。