要望書・意見書
■最終更新 2013年4月4日
知事の差別発言に対する抗議
2007年4月12日
愛知県知事
神田 真秋 様
日本障害フォーラム
代表 小川 榮一
知事の差別発言に対する抗議
私たち日本障害フォーラム(JDF)は、障害当事者団体を中心に、障害関係の専門職団体や支援団体によって構成され、わが国の障害関係団体の大多数が何らかの形でここに参加しています。
去る4月2日、神田真秋愛知県知事は、新規採用職員に対する訓示の中で「遺伝子にはいい遺伝子と、生き物の宿命として弱い、悪い遺伝子がある。悪い遺伝子が表に出ることや、いい遺伝子だけが表に出ることもある」こう述べたとの報道がありました。これは、障害のある人や病気の人を深く傷つけるもので、私たちは大きな憤りを禁じえません。とくに“遺伝子”を用いたことについては優生思想を髣髴とさせるもので、絶対に容認できません。ここに、神田知事に対して強く抗議するとともに、猛省を求めます。
わが国では、過去から現在に至るまで、社会の誤った認識によって障害や病気にある人々が差別されてきました。誤った認識は国家によっても繰り返され、取り返しのつかない非人間的な生活を強いられた人々が数多く存在します。そして、今なお苦しみに喘いでいる人々が少なくないことを忘れてはなりません。
他方、昨年12月には国連で“障害者権利条約”が採択されました。その基本的精神は「障害問題の本質は社会のあり方にあり、社会のシステムや人々の意識が変わることにより、障害問題すなわち障害を理由とする差別という問題は解決に向かう」というものです。残念ながら、神田知事の発言とは大きな隔たり感を覚えます。
行政、あるいは行政の長にある者は、障害のある人々がこれまで遭遇してきた苦難の歴史を正確に認識することによってのみ、平等を旨とする障害者政策が、そしてあらゆる人間の尊厳を礎とする社会政策が、真に実効性を伴うものと確信します。なお、私たちは、今般の発言にみられるような誤った意識は、ひとり神田知事のみならず、国や地方自治体の中に深く潜んでいるのではないか、その可能性を強く危惧します。
私たち日本障害フォーラムは、社会のあらゆる場面において「神田知事発言」が繰り返されてはならないことを切望し、同時にその背後にある障害や病気にある人々に対する「誤った認識」の払拭を強く求めます。そして、引き続き人間の尊厳と平等に根ざした障害者政策の実質化に向けて、運動を強めていく所存です。