要望書・意見書
■最終更新 2013年3月5日
障害者権利条約批准に関する意見
日本障害フォーラム(JDF)
代表 小川 榮一
障害者権利条約批准に関する意見
貴党におかれましては、平素より障害者の権利の向上並びに福祉の充実へのご尽力に対し、心より敬意を表します。
2006年12月、障害者の権利に関する条約(以下、条約)が採択され、2007年9月にはわが国も署名をしました。私どもJDFは、国連日本政府代表団へのJDF推薦による民間からの障害当事者顧問の参加、8度に渡って開催された国連特別委員会への延べ200人以上のNGO代表団の派遣、条約に関する20回に及ぶ政府との意見交換会等、本条約に深く関与してまいりました。
JDFは、条約批准は推進するも、国内法整備をきちんと担保した上での批准を求めてまいりました。その意味から、拙速は許されず、形式的な批准は絶対に避けなければなりません。付きましては、以下、JDFとしての意見を表明いたします。
記
1.障害者団体・関係団体の実質的な参画が保障されるべきです。
条約の批准から国内実施に関する全ての過程に、障害者団体・関係団体の参画が保障されるべきであり、条約4条などにその旨が規定されています。この規定は、他の国連人権条約にはない規定です。障害当事者・関係者が実質的に参加することが大切であり、本条約の根幹を成す規定です。公定訳の策定も含め、これらの確保を政府・関係機関に働きかけてください。
2.第1条に関連して、全ての障害者の全ての権利を保障すべきです。
条約の「目的」は、全ての障害者に障害のない人と平等に(on an equal basis
with others)に全ての権利を保障することです。そして、「障害者」とは、機能障害をもつ人だけでなく、そうした機能障害は、社会環境の障壁との関係で社会参加が妨げられるものも含む、と概念規定がされており、障害者を幅広く捉えています。この規定に即した国内法の見直しが必要です。
3.平等・非差別の原則に基づいた「障害者差別禁止法」が必要です。
条約の骨格となるのが「平等・非差別」の原則です。条約の原則を定めた3条、締約国の義務を定めた4条、平等・非差別規定の5条等の規定から、2条に定義された「障害に基づく差別」を禁止する立法手段も含めた全ての措置を取るべきです。すなわち、全ての生活分野の規定をしている条約に即した総合的な差別禁止法の制定が必須です。
4.政府から独立した監視(モニタリング)機関の設置が必要です。
条約が国内で履行されているかを監視する監視機関は非常に重要です。33条の規定に沿った政府から独立した機関が、障害者団体参画が保障された形で設置されることが条約の批准には必須です。
5.条約に即した国内法の整備を具体的に進めるための仕組みが必要です。
「基本的人権や自由及び民主主義といった普遍的価値を重視した外交を推進してきている我が国としても、かかる「人権の主流化」の流れを踏まえ、今後、人権分野での取組を強化していく考え」(外務省ホームページ)の下で「人権外交」を進めている日本にふさわしい、高い水準での批准が必要です。「言語としての手話の承認」(2条、24条)や「法的能力」(12条等)、「司法へのアクセス」(13条)、「虐待防止」(16条)、「地域生活の権利の確保」(19条)、「インクルーシブ教育制度への転換」(24条)、「雇用・労働」(27条)、その他多くの課題が残されています。これらの課題についての取り組みを当事者参画のもとで具体的に進める制度や機関が必要です。
6.選択議定書の批准を推進すべきです。
障害者権利条約の条約体である「障害者権利委員会」への、条約締約国の管轄下にある個人または集団による通報制度を規定する「障害者権利条約の選択議定書」(Optional Protocol to the Convention on the Rights of Persons with Disabilities)の批准を本格的に推進すべきです。
以上
※民主党障がい者政策プロジェクトチーム(2009年2月13日)、
日本共産党国会議員団 障害者の全面参加と平等推進委員会(2009年3月9日)、
国連障害者の権利条約推進議員連盟総会(2009年3月18日)
にて提出。