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障害者基本法の改正に関する日本障害フォーラム(JDF)の見解
2009.4.15
障害者基本法の改正に関する日本障害フォーラム(JDF)の見解
●もくじ●
第1 障害者権利条約の批准にあたって
◆障害者基本法改正の基本方針(視点)
第2 障害者基本法の「改正事項」(推進課長会議)について
第1 障害者権利条約の批准にあたって
「障害者権利条約」は、2007年9月28日に日本政府が署名し、現在、批准に向けて、障害者及びその関係者をはじめとして、国民的な規模で、議論が行われているところである。
日本障害フォーラム(以下「JDF」という。)では、「障害者権利条約」の実現に向けて、2002年の第1回国連特別委員会からNGO代表団を延べ約200人送るとともに、国内においては、政府との継続的な意見交換、また超党派による「国連障害者の権利条約推進議員連盟」と、同条約制定に向けて協力をしてきたところである。これら一連のJDFの行動は、障害者の人権の保障と尊厳の尊重並びに障害者差別禁止法の制定を目指したものである。
JDFは、「障害者権利条約」の署名後も、その批准に向け、政府と度重なる意見交換会を行うとともに、各地域において地域フォーラム等を開催し、広く啓発活動を行ってきた。
一方、国内においては、千葉県の「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」や北海道の「北海道障がい者及び障がい児の権利擁護並びに障がい者及び障がい児が暮らしやすい地域づくりの推進に関する条例」の制定をみた。
「障害者権利条約」の理念は、その前文に述べられているように「すべての人権及び基本的自由が普遍的であり、不可分のものであり、相互に依存し、かつ、相互に関連を有すること並びに障害者がすべての人権及び基本的自由を差別なしに完全に享有することを保障すること」にあり、すなわち、“障害者は権利の主体であること”、そして“障害者に対する差別は禁止されなければならないこと”の2点に、その基本理念が集約されていると考えられる。
現在、「障害者基本法」が施行後5年の見直しを迎え、政府は、同法の改正に併せ、「障害者権利条約」の批准を進めていると考えられる。JDFは、一日も早い「障害者権利条約」批准を願っている。ただし、批准に関しては、同条約の規定と国内障害者関連法制等との整合性に配慮しつつ、障害当事者をはじめとして、国民の意見を充分に取り入れ慎重に検討していくことを望むところである。
そして、この立場からいえば、「障害者基本法」改正に臨む基本的視点は、“障害者を権利の主体と位置づけ、施策の客体に限定しないこと”並びに“障害者の差別を禁止する法的整備を行うこと”等にあると考えられる。
従って、まず“障害者を権利の主体と位置づける”という基本理念の視点から、「障害者基本法」の全文の見直しを行うべきである。
“障害者の差別を禁止する法的整備”に関しては、今回の「障害者基本法」の改正とは別途、十分な検討を経て行うべきと考えるが、今回の「障害者基本法」の改正の際には、法律創設を担保する規定を明記するべきである。
なお、各種の障害者関連法制等は、「障害者基本法」の改正と併行して、引き続き整備を行っていく必要がある。
JDFは、「障害者基本法」の改正のみを、「障害者権利条約」の批准の条件であるとは考えない。ただし「障害者基本法」の改正は、条約の精神や内容を十分に踏まえて行うとともに、条約批准の主な要件のひとつとすべきである。
このような経過を経て、JDFは「障害者権利条約」の批准の実現を願うものである。
以上
障害者基本法改正の基本方針(視点)
1.障害者基本法の改正のみを、障害者権利条約の批准の条件としないこと。ただし、基本法の改正は、条約の精神や内容を十分に踏まえて行うとともに、条約批准の主な要件のひとつとすること。
2.障害者基本法の改正とは別に、障害者差別禁止法(仮称)を創設すること。
3.障害者差別禁止法(仮称)の創設時期は、障害者基本法の改正後3年以内とし、障害者基本法改正の条文として明文化すること。
4.障害者基本法の主な改正事項
(1)障害者を「権利の主体」に位置づけた規定とし、「施策の客体」に限定しないこと。
(2)障害者差別禁止法制への道筋となる規定を設け、担保すること
(3)障害者基本法で改正する事項と、障害者差別禁止法(仮称)に規定する事項を分けること。
(4)虐待防止については、障害者基本法の中に差別禁止と同様に規定すること。
(5)第2条の定義は、障害者権利条約の規定を考慮し、障害が態度及び環境の障壁との相互作用から生じるという観点を含めること。
(6)差別の定義を明確にすること。
・直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如、差別の積極的是正措置等に言及。
(7)監視機関(モニタリング)は計画策定機関(中障協)と、分離して設置し、障害者基本法の中に規定すること。
(8)救済機関と監視機関(モニタリング)は分離し、救済機関については、障害者差別禁止法(仮称)の中に規定すること。
(9)障害者基本法に規定されていない事項について、規定を追加し整理すること。
(10)同法で規定されている事項で適切でないものは明確にすること。
・障害者の福祉に関する施策→障害者に関する施策へ訂正など
(11)その他
第2 障害者基本法の「改正事項」(推進課長会議)について
◆「障害者権利条約の締結に際し必要と考えられる障害者基本法の改正事項」
(障害者施策推進課長会議 平成20年12月26日 検討結果)
(1)差別の定義を新たに設け、差別について類型的に記載する。
(2)(1)の定義においては、「合理的配慮の否定」が差別に含まれることを明記する。
(3)基本的理念として規定された差別の禁止について、(2)を踏まえたものとする。
(4)国及び地方公共団体の責務として規定された差別の防止について、(2)を踏まえたものとする。
(5)国民の理解のために、(1)及び(2)において定義された差別に該当するおそれのある事例を国が収集し、公表することとする。
(6)国民の責務における差別防止の努力について、(2)を踏まえたものとする。
(7)中障協(中央障害者施策推進協議会)について、障害者基本計画の作成及び変更の際の意見聴取に加えて、障害者施策に関する調査審議、意見具申及び施策の実施状況の監視等の所掌事務を追加する。
(8)中障協について、関係行政機関に対する資料提出等の協力の要請ができることとする。
「改正事項」に関する基本的見解
1 「障害者基本法」を改正する基本的理念が示されていないこと。
2 障害者権利条約の基本理念をどのように考えているのか不明であること。
3 障害者権利条約を批准するために、権利条約の基本理念を、「改正事項」にどのように反映させているのか不明であること。
4 「障害者基本法」改正案の具体的な条文が提示されていないこと。
5 従って、本「改正事項」の8項目のみで、障害者権利条約の基本理念を充たしているとは考えられないこと。
以上により、JDFとしては、本「改正事項」に賛成できない。