JDF-日本障害フォーラム-Japan Disability Forum

JDF は、障害のある人の権利を推進することを目的に、障害者団体を中心として2004年に設立された団体です。

JDF

要望書・意見書

■最終更新 2012年3月9日

HOME>要望書・意見書>障害者総合福祉法(仮称)の制定に関する緊急の質問と重点要望」(2012年2月27日)に対する民主党障がい者ワーキングチーム(WT)からの回答(2012年3月9日付)

障害者総合福祉法(仮称)の制定に関する緊急の質問と重点要望」(2012年2月27日)
に対する民主党障がい者ワーキングチーム(WT)からの回答(2012年3月9日付)

1.障害者権利条約について
 「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について(平成22年6月29日)」では、「障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革の推進を図る」こととされており、「横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方」として、「障害者基本法」の改正、「障害を理由とする差別の禁止に関する法律」の制定及び「障害者総合福祉法」(仮称)の制定があげられています。
 「障害者基本法」については、昨年改正法が成立しました。また、「障害者総合支援法案」については、今月中旬に閣議決定の予定ですので、速やかに成立を図りたいと考えています。
 さらに、内閣府において、平成25年国会常会への提出を目指し「障害を理由とする差別の禁止に関する法律」の検討が進められていますので、その内容も踏まえ、総合的に検討されるべきものと考えています。
 これらの取組を通じて、障害者権利条約の批准に向けて、民主党としても必要な対応をしてまいります。

2.基本合意について
 平成22年12月の障害者自立支援法、児童福祉法等の一部改正(以下「22年改正法」という。)により、自立支援法廃止の最大の理由であった利用者負担が「応益負担」から「応能負担」に改正されるなど、抜本的な改正が行われました。
 今回提出を予定している「障害者総合支援法案」では、障害者基本法を踏まえた基本理念を盛り込むとともに、法律の根幹となる名称や目的規定を改正することとしており、障害者自立支援法の廃止になると考えています。
 したがって、これまでの予算措置や運用改善も含め、基本合意に掲げられた事項については対応していると考えています。


緊急要望項目 回答
1.障害の範囲
 昨年改正された障害者基本法第二条第一項に規定する「障害者(断続的、周期的なものを含む)」として、新たな谷間を生むことのない、社会モデルに基づく包括的規定として下さい。また、今後、関係法の改正・政令等の検討においても、上記の改正・障害者基本法の規定を踏まえ、新たな谷間を生むことがないようにしてください。
 新法では、制度の谷間のない支援として、障害者の定義に新たに難病等を位置付け、障害福祉サービスの対象とすることとしておりますが、対象者となる者の範囲については政令で定めることとしております。
 対象者の範囲については、今後、厚生労働省において、厚生科学審議会難病対策委員会での議論を踏まえ、施行までに検討すると聞いております。
 また、民主党障がい者ワーキングチーム(WT)の厚生労働省案に対する意見(2012年2月21日)(以下「WTとりまとめ」)では、「法の対象となる障害者の範囲を定める政令については、「制度の谷間」をなくすという基本的考え方に立ち、難病対策全般の見直し等における専門的・技術的な意見も踏まえて検討すべきこと。」としており、これを踏まえた検討を求めてまいります。
2.支給決定のしくみ
 2月8日に示された厚生労働省案に比べ、支給決定全体への見直しを検討事項で明記していることは評価します。現行の制度の持つ問題点を解決し、支援ニーズを的確に汲みとることのできる制度を目指す旨を明記してください。
 支給決定の在り方については、新法で、「障害程度区分の認定を含めた支給決定の在り方(中略)等について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとする。」旨の検討規定を設けるとともに、検討に当たっては、「障害者及びその家族その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」ことを明記しております。
 また、WTとりまとめでは、「法に基づく支給決定の在り方の検討にあたっては、個別事情に即した障害者及びその家族の意向を尊重すべき」としており、これを踏まえた検討を求めてまいります。

 

緊急要望項目 回答
3.支援体系
(1)パーソナルアシスタント制度の導入に向けて
 見守り介助なども含む長時間介助サービスである重度訪問介護が肢体障害者のみに限定されています。骨格提言では、障害者の地域生活を支えるための必須の福祉サービス制度としてパーソナルアシスタント制度の導入と、その段階的実現のために重度訪問介護の対象者の拡大を提言しています。第一段階として重度訪問介護を必要とするすべての障害者が使えるよう法制化してください。
 なお、改正障害者基本法第23条では、相談支援業務における意志決定支援への配慮が明記されましたが、それを十分に、かつ日常生活等でも担保するには、意志決定支援のシステムづくりが不可欠です。その開発を進めてください。
 重度訪問介護については、民主党障がい者ワーキングチーム(WT)での強い要望を踏まえ、新法で、対象者を「重度の肢体不自由者その他の障害者であって常時介護を要するものとして厚生労働省令で定めるもの」とし、厚生労働省令において、現行の重度の肢体不自由者に加え、重度の知的障害者・精神障害者にも拡大することとしております。
 意思決定支援については、22年改正法で、サービス等利用計画案において本人の意向等を勘案することを法律上明記するとともに、支給決定プロセスを見直して、計画案を勘案して支給決定を行う仕組みといたしました。
 また、新法では、障害福祉サービス事業者や相談支援事業者等の責務として、その行う支援を「障害者等の立場に立って」行うように努めなければならないことを明記しております。

 

緊急要望項目 回答
3.支援体系
(2)コミュニケーション支援
 昨年8月に改正された障害者基本法では、コミュニケーションについて第3条で手話が言語として明記されるなど、我が国の法体系における理念が大きく前進しました。そうした前進をきちんと現実の生活で実感できるようにすべきです。コミュニケーション支援については、参政権など国民が享受している権利行使のため基礎となるというものであるという視点から、全国共通の仕組み(義務的経費)としてください。
 新法では、身近な場所において必要な社会参加の機会が確保されるよう、市町村が行う地域生活支援事業として「手話通訳等を行う者を養成する事業」を盛り込むとともに、「手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとする」旨の検討規定を盛り込んでおります。
 なお、引き続き地域生活支援事業の充実や予算の確保に努めてまいります。
3.支援体系
(3)通訳・介助支援
 盲ろう者向け通訳介助員派遣事業は地域生活支援事業のために、支給量の絶対量が少なく、地域格差が極めて大きい現状にあります。地域間格差を解消し、どの地域においても必要な支援を得られるように、盲ろう者の希少性・ニーズの多様性から都道府県単位での実施は維持した上で、全国共通の仕組み(義務的経費)としてください。
 新法では、身近な場所において必要な社会参加の機会が確保されるよう、市町村が行う地域生活支援事業として「手話通訳等を行う者を養成する事業」を盛り込むとともに、「手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとする」旨の検討規定を盛り込んでおります。
 なお、引き続き地域生活支援事業の充実や予算の確保に努めてまいります。


緊急要望項目 回答
(4)移動支援の個別給付
 今回の法律においては、社会モデルの理念規定を設けるとされています。「他の者(障害のない市民)と平等」な社会参加を実現するため、障害者の基本的権利に関わる移動支援についても、全国共通の仕組み(義務的経費)としてください。
 新法では、「常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援(中略)その他の障害福祉サービスの在り方(中略)等について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとする」旨の検討規定を盛り込んでおります。
 なお、引き続き地域生活支援事業の充実や予算の確保に努めてまいります。
3.支援体系
(5)相談支援の義務的経費化
 障害者福祉の基礎である相談支援の地域格差が深刻です。1か所あたりの基礎的必要経費と個別件数に応じて支払われるサービス利用計画費とを組み合わせて運営費とし、どちらも義務的経費としてください。
 22年改正法では、計画相談支援・障害児相談支援と地域移行支援・地域定着支援を法定化し、義務的経費化したところです。
 また、平成24年度障害福祉サービス等報酬改定の中で、計画相談支援・障害児相談支援や地域移行支援・地域定着支援については、適切な評価を行うこととしております。


緊急要望項目 回答
 4.地域移行・地域資源整備の法定化①
 社会的入院、入所解消のための地域移行促進を法に明記するとともに、障害者が地域生活を営む上で必要な社会資源を計画的に整備するための「地域基盤整備10カ年戦略」を法定化し策定してください。
 なお、先般パイロット研究として行われた、障害者入所施設および精神科病院の入所者・入院者に対する実態調査は、予算を組み全国調査を行ってください。
 地域移行促進については、22年改正法により、地域移行支援・地域定着支援を個別給付化し、本年4月から施行することとしております。
 障害福祉計画については、新法では、国の基本指針について、以下の新たな規定を創設するなどしたところです。
① 「障害福祉サービス、相談支援及び市町村・都道府県の地域生活支援事業の提供体制の確保に係る目標に関する事項」を定めるものとしたこと
② 厚生労働大臣は、基本指針の案を作成又は変更しようとするときは、あらかじめ、障害者等の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならないこと。
③ 厚生労働大臣は、障害者等の生活の実態、障害者等を取り巻く環境の変化等を勘案して必要があると認めるときは、速やかに基本指針を変更するものとしたこと。
 また、市町村及び都道府県の障害福祉計画についても、以下の新たな規定を創設するなどしたところです。
① 市町村の障害福祉計画については、市町村は、客観的な指標に限らず地域の潜在的なニーズ等も考慮し、作成するよう努めること
② 市町村・都道府県は、調査・分析・評価を行い、必要があると認めるときは、障害福祉計画の変更その他の必要な措置を講ずること。
③ 市町村・都道府県は、計画の作成・変更に当たっては自立支援協議会の意見を聴くよう努めなければならないが、この協議会の構成員に障害者及びその家族を含めたこと。

 なお、現在、厚生労働省の補助金により、パイロット研究が行われており、その研究成果は本年5月末までに出ると聞いております。
(参考)平成23年度厚生労働科学研究(障害者対策総合研究事業)
研究課題名:障害者入所施設および精神科病院の入所者・入院者に対する全国実態調査にむけたパイロット研究
研究代表者:日本社会事業大学 佐藤久夫先生


緊急要望項目 回答
5.利用者負担
 収入認定にあたっては、家族依存からの脱却という観点と合わせて、本人のみの収入としてください。また、利用者負担で、高額な収入のある等利用者負担の発生する場合は、現行の負担水準を上回らないようにしてください。障害福祉サービス、補装具、自立支援医療(地域生活支援事業)、介護保険を合算し、過大な負担とならないようにしてください。また、利用者負担はサービス利用を抑制する効果を生まない範囲にすべきことを規定してください。
 なお、コミュニケーション支援については、その支援の性格から無償としてください。
 また、施設入所支援における応能負担制度の導入に際し、特定日常生活費以外は、本人負担から除外してください。
 平成22年4月から低所得の障害者等の利用者負担を無料として、実質的に応能負担としております。
 また、22年改正法では、応能負担であることを法律上も明確化したほか、障害福祉サービス等と補装具の利用者負担を合算し、負担を軽減する仕組みを導入いたしました。
 利用者負担を原則無償とすることや、収入の認定に際して配偶者等の収入を考慮に入れないことについては、財源の確保状況や医療や介護など他の制度との整合性・公平性も踏まえた国民的な議論が必要であることから、引き続き検討してまいります。


緊急要望項目 回答
6.権利擁護の法定化
 相談支援、申請、支給決定、利用を含むすべての段階において、相談支援とは別に、障害者本人への権利擁護制度を法定化してください。
 22年改正法では、成年後見制度利用支援事業を地域生活支援事業の必須事業といたしました。
 また、障害者に対する虐待の禁止、国等の責務、虐待を受けた障害者に対する保護・自立支援のための措置、養護者に対する支援の措置等を規定した障害者虐待防止法が、今年10月から施行されました。
 新法では、成年後見制度の利用を促すため、市民後見人等の人材の育成活用を図るための事業を地域生活支援事業の必須事業とするほか、知的障害者につき、成年後見制度の審判請求を行うことが出来る市町村が、当該制度の利用促進のための体制整備に努めることとする旨の規定を新たに設けることとしております。


緊急要望項目 回答
7.報酬
 支払い方式については、日払いと月払い、それぞれのメリットを活かして、施設系については、利用者個別給付報酬=事業費は日払い、事業運営報酬=事務費・人件費は月払いと、日払いと月払いを組み合わせた形にしてください。(在宅系については、時間割を維持)
 また、安定した支援を確保していくために、常勤換算方式の廃止をお願いします。
 報酬の在り方については、医療、介護などの他の制度の取組も参考としつつ、事業所の経営実態、各サービスの利用実態等の客観的・具体的なデータに基づいて検討することといたします。

(参考)
日払い方式と月払い方式については、それぞれメリット・デメリットが考えられるが、日払い方式では経営が不安定になってしまうとの指摘については、
・ 日払い方式の導入に際しての報酬単価の設定に当たっては、利用率を加味して一定の欠員等にも配慮したこと
・ 生活介護等の利用者が急に利用を中止した場合や、施設やグループホーム・ケアホームで生活する者が長期間にわたり入院等した場合の連絡調整や相談援助を加算で評価していること
・ 事業者の安定的な経営が図られるよう、定員を超えて利用者を受け入れられるようにしていること
などの取組を行っている。
 また、人員配置基準については、サービスを担保するために必要な最低限必要なものとして設定しており、非常勤職員も柔軟に活用できる常勤換算方法の採用により、弾力的な運用も可能としている。


緊急要望項目 回答
8.長時間介助等の地域生活支援のための財源措置
 障がい者WT意見書における「訪問系サービスに関する国庫負担基準については、国と地方公共団体の役割分担も考慮しつつ、引き続き、検討すべきこと」との規定を踏まえて、国庫負担基準超過の有無に関係なく、長時間介助等について市町村の財政負担を軽減する措置の検討を早急に行ってください。
 新法では、「常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援(中略)その他の障害福祉サービスの在り方(中略)等について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとする」旨の検討規定を盛り込んでおります。
 また、WTとりまとめでは、「訪問系サービスに係る国庫負担基準については、国と地方公共団体の役割分担も考慮しつつ、引き続き、検討すべきこと」としており、これらを踏まえた検討を求めていく。

(参考)
平成24年度予算案では、22億円計上し、基金事業で行われていた重度訪問介護等の利用促進のための支給額が国庫負担基準を超過している市町村への財政支援を、補助金化して継続実施することとしている。


緊急要望項目 回答
9.今後の検討における障害当事者参画の保障
 検討事項二で「政府は、一の検討を加えようとするときは、障害者及びその家族その他の関係者の意見を聞くものとすること」とされています。権利条約の批准に向けた改正、ということ、社会モデルへの転換、ということであれば、少なくともこの間の障害者制度改革の議論を踏まえた形で検討することができる協議体が必要です。制度改革の趣旨にふさわしい検討の場を設置してください。
 新法では、「常時介護を要する障害者等に対する支援、障害者等の移動の支援、障害者の就労の支援その他の障害福祉サービスの在り方、障害程度区分の認定を含めた支給決定の在り方、手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方等について検討を加え、その結果に基づいて、所要の措置を講ずるものとする。」旨の検討規定を設けるとともに、検討に当たっては、「障害者及びその家族その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」こととしており、引き続き検討してまいります。
10.工程表の設定等
 工程表の設定が不可欠と考えますが、それに際しては具体的な目標や確実な方向性を明示してください。また、最終的な制度体系の全体像がどのようになるか、明示してください。
 なお、新法の名称については、仮称を含めて、くれぐれも障害者政策の後退をイメージさせることのないよう特段の注意を払ってください。
 これまでの民主党厚生労働部門会議や障がい者WTで、厚生労働省より、具体的な工程表が示されており、その工程表において施策を段階的・計画的に実現していくことが明確にされております。
 新法の名称については、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」とすることとしており、障害者施策を着実に推進していくこととなるものと考えております。

ページの先頭へ