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■最終更新 2012年11月7日

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障害者政策委員会 差別禁止部会の意見へのコメント

2012年11月7日 民主党差別禁止法PTヒアリング資料

障害者政策委員会 差別禁止部会の意見へのコメント

JDF(日本障害フォーラム)

【コメントのポイント】

  1. 障害に基づく差別を禁止する単独法(差別禁止法)を必ず制定すること。
  2. 行為規範および裁判規範となりうるように、部会意見に即して、障害に基づ く差別の定義を明らかにすること。
  3. 部会意見で整理されている「総則」、少なくとも10の分野の「各則」、「紛争 解決のしくみ」をすべて網羅した法律にすること。

はじめに(p1~p7)

(1)法の名称(p1)
共生社会の実現のための法律であることが伝わることが必要。

(2)立法事実(p3)となぜ必要か(p5)
ここは特に強調したい部分で、現在では何が差別になるのか不明確であり、法的根 拠を基に合理的配慮を求めることができない。差別事例が起きても、現在ある解決 の手段も障害者の側からすると有効ではなく、泣き寝入りや我慢することが多い。


第1章.総則(p8~p28)

(1)差別からの法的保護(p9)
既存の法制度は差別事例解決手段としては不十分。障害の問題を国際的人権規範の 水準で判断等を行うことができる実効性のある制度が必ず必要。

(2)国等の責務
①ガイドラインの作成(p10)

  • 差別問題に取り組んできた障害当事者や関係者、差別問題に関して国際的状況に詳 しい障害当事者や関係者を必ず入れて作成すること。
  • ガイドラインの作成に当たっては制度改革を担当している内閣府が中心となり、担 当部署と連携して作成するべき
  • 事業所などが合理的配慮を実施するための支援を国等の責務として必ず法文に明記 すべき。障害者権利条約(以下、権利条約)の第5 条3 項で、「締約国は、平等を促 進し及び差別を撤廃するため、合理的配慮が行われることを確保するためのすべて の適切な措置をとる」と規定されている。

②研修及び人材育成(p11)
特に行政関係者や司法関係者の研修は特に重要である。さらに、研修の実施に当た っては、障害当事者が講師となることが不可欠である。

(3)国の基本的責務に関して特に留意を要する領域(p11)
①障害女性について
国が就労や所得など障害女性の全般的な実態を調査、把握し、障害女性に必要な施 策を講ずることはもちろん、「女性」でかつ「障害」による複合差別についての研究 を進め、必要な法的措置を取るべきである。差別禁止法における障害女性個別の条 文を設けることについて、障害女性や関係者にとって法律が使いやすくなる点をか んがみ、検討すべきである。

②障害に関連して行われるハラスメント(p12)
障害者虐待防止法における「虐待」と「障害差別」の間にある障害を理由としたあ るいは関連するハラスメントの被害を法的に防止し、被害者の保護を行うべきで、 今回の差別禁止法に取り込むべきである。

③欠格条項(p12)
意見書で述べている通り、国等が認定する資格取得などで、障害を理由にあるいは 関連して資格制限が行われていないか、正当化事由にあたるかどうかを検討しなが ら、必要であれば法制度の見直しなどといった措置を取るべきである。

(4)障害に基づく差別の定義(p14~p28)
①障害の定義
部会意見で示している通り、手帳の有無にかかわらずあらゆる機能障害を含めるよ う、障害者基本法第2条「障害者の定義」に基づく定義を行うべきである。

②障害に基づく差別の定義(p15~p28)

  • 差別禁止部会では、障害に基づく差別について多くの時間を割き、丁寧に議論して きた経緯があり、部会意見のこの部分の内容に賛成する。
  • 直接差別、間接差別、関連差別、合理的配慮の不提供などのあらゆる差別に対応し た「障害に基づく差別の定義」を明確に定義することが必要である。その場合は部 会意見の2 類型の整理(「不均等待遇」と「合理的配慮の不提供」)がわかりやすく て望ましいと考える。ただし、不均等待遇という名称は「不平等待遇」などの方が わかりやすいかもしれない。
  • 正当化事由について(例外について)は立証責任を転換すべきである。
  • 合理的配慮の定義については、権利条約第2 条の定義に即して定義すべきである。

第2章.各則(p29~p76)

【第1節 公共的施設・交通機関 】(p29)

(1)必要性について
①「国のバリアフリー施策との関係」について(p31)
交通機関や建物について、バリアフリー法の円滑化基準(基準)以下では、障害者 は当該施設等を利用できない現状が厳然としてある。例えば、全国にはエレベータ ーが設置されていない鉄道駅は無数にある。車いすを利用している障害者が利用可 能な長距離バスもほとんどない。施策によるバリアフリー化(最低基準の設定と底 上げ)と個別具体的な場面における不均等取扱いの禁止や合理的配慮提供義務を規 定する差別禁止法は、障害者が障害のない人と平等に社会参加する共生社会づくり のためには両方が進められるべき車の両輪となるべきものである。

②「不均等待遇を正当化する事由」(p32)
安全上、どうしてもやむを得ない場合に不均等待遇が例外的に許される場合がある ことも想定されるが、それは部会意見のp33 にあるとおり、まずは合理的配慮を尽 くされた上で、その後、差別行為が正当化されるかどうかの判断をすべきである。

【第2節 情報・コミュニケーション 】(p34)

(1)必要性について
①情報へのアクセスは権利条約でも総則で規定されている極めて重要な概念であり、 権利行使の基礎となるものと位置づけられている。しかし、現状は国民の基本的な 権利である政治参加の場面ですら情報提供がなされていない、或いは不十分である。 例えば、国会審議や政見放送などでの情報保障などである。よって、情報・コミュ ニケーション分野で情報提供と意思疎通の概念を整理して、禁止すべき障害に基づ く差別となすべき合理的配慮が何かをある程度示す必要がある。

②この分野で禁止される障害に基づく差別について(p36~)
≪一般公衆への情報提供の場合≫

  • 国や地方公共団体による公共サービスの場合は合理的配慮不提供の過度な負担の抗 弁は認めるべきではない。
  • 民間事業者の場合で政治参加に関する情報提供や災害放送等の生命に関わるものな どきわめて公共性が高い情報提供の場合も、合理的配慮の不提供における過度な負 担の抗弁は原則認めるべきではない。この場合、一方的に事業者に責任を負わすの でなく、国の責務によって合理的配慮の提供を保障すべきである。
  • 情報保障が必要な障害者の場合、そもそも情報を得るための合理的配慮を求めるこ とすら困難であることをかんがみる必要がある。

≪少数を対象とするが不特定の者、特定の者への情報提供≫(p37)
部会意見で指摘しているところであるが、音楽鑑賞など芸術性や表現の自由から、 可能な配慮は一般公衆への情報提供の場合と比べれば少なくなるのは事実だが、有 償の場合は少なくとも可能な合理的配慮を行わないことは差別に当たるとすべきで ある。

【第3節 商品・役務・不動産 】(p38)

(1)必要性について
①行政サービスの位置づけ
特に国や自治体が行う行政サービスをこの分野にきちんと位置付け、障害に基づく差 別を禁止すべきである。

②不動産の利用

  • 家を借りることができない、部屋を借りることができないことは、実際に障害者が地 域で生活するうえで直面する大きな困難の一つである。施設や病院からの地域移行を 妨げている大きな原因の一つとなっている。各則にきちんとおいて、この分野の障害 に基づく差別を禁止すべきである。
  • 公営住宅の入居において「自活要件」や居宅サポート支援事業が行われていることを 条件にするのは差別とみなすべきであろう。

【第4節 医療 (p43)】

(1)必要性
①障害者は障害のない人と比べ、医療行為の提供に当たり十分な説明に基づく自由な同 意(インフォーム・ドコンセント)が行われない、診療拒否に会う、といったことは 日常でよくあることである。医療分野は健康や生命に直結する分野でもあり、差別禁 止法の各則として必要である。

(2)正当化事由
①「不均等待遇を正当化する事由」について(p44~)
部会意見の通り、障害者と障害のない人との差別をなくすという観点から、緊急医療 一般で認められている例外を除いて合理的配慮の提供の等の方法がある限り、正当化 事由は認められるべきでない。

②「合理的配慮の不提供を正当化する事由」について(p45)
生命や健康に直結する医療分野においては、過度な負担等の抗弁は原則として認め ず、原則の例外は極めて慎重に判断されるべきである。

【第5節 教育 (p47)】

(1)必要性
①同世代の子どもと共に学ぶ機会を奪うことは差別である。

②日本の現行法制度
障害の種類と程度によって定められた基準に該当する場合には、原則として特別支 援学校に就学先を決定する仕組みになっていること、地域の通常学級に通う障害児 が配慮(合理的配慮)を十分に受けることができない実情は権利条約に抵触してい るといえる。不均等待遇や合理的配慮の不提供が障害に基づく差別であることを明 確にして、これを禁止すべきである。本分野における差別禁止、合理的配慮の保障 の観点を推進することは、障害児者と共に障害のない者の教育の質的な向上のため に必要であり、すべての人が安心して暮らせる共生社会の実現に不可欠である。差 別禁止法制定にあたっては、本分野を含めることは不可欠である。

(2)不均等待遇を正当化する事由
教育の分野において、当該取扱いがやむを得ないといえるためには、学校及び学校 設置者等が合理的配慮を尽くしても障害者の教育目的を達成しえない場合でなけれ ばならない。とある。ただし、初等中等教育においては、よりわけへだてのない方 法によって行わなければならない旨、障害に基づく差別の定義から特別支援学校へ の就学を本人や保護者が希望した場合は不均等待遇にあたらない、という規定も必 要。

(3)その他の留意事項

  • 内部紛争解決の仕組みとしては、障害者及び保護者の立場を支援する第三者の参加 を得ながら意見の調整が図られる仕組みが必要である。教育の分野においても部会 意見第3 章の紛争解決の仕組みを利用することができるものとすべきである。
  • 通学支援は障害者が教育を受ける上で不可欠。省庁を横断した形で検討が必要。

(4)文部科学省中央教育審議会における議論との整合性の確保
2012年7月に中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特 別委員会報告(共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム推進のための 特別支援教育の推進)がだされた。そこでは「障害者権利条約の理念」が重要、「共 に学ぶことを追求」するという記述がある。しかし、特に、「障害または障害に関連 した事由を理由とする区別」が障害者差別に該当することについての強い認識がな されていない点に懸念する。特に以下の点について、部会意見と文部科学省の意見 の調整を行うべきである。

  1. 1.就学先決定の仕組みについて
  2. 合理的配慮の提供と不提供の正当化事由

【第6節 雇用 (p53)】

(1)必要性

  • 障害に基づく差別の定義や合理的配慮義務と内容が明確にされていないこともあり、 雇用の分野においては、障害を持つ人が様ざまな形で排除等がされてきたのが事実 である。
  • 権利条約第27条でも「あらゆる形態の雇用に係るすべての事項に関して障害に基づ く差別を禁止すること」と明記している。また、海外の差別禁止法制度でも雇用分 野を含まない差別禁止法はないと思われる。
  • 本分野における差別禁止、合理的配慮の提供のしくみは、障害者の労働の質と量を 飛躍的に高めることに寄与するものと期待される。

(2)福祉的就労(p54)

  • 部会意見にあるとおり、福祉的就労と言われる就労形態においても、労働の実態が ある場合には差別禁止法制の対象とすべきであると考える。

(3)その他
①労働政策審議会における議論との整合性の確保
現在、障害者雇用分科会において「労働・雇用分野における障害者権利条約への対 応の在り方」に関する議論が進められている。「内閣府等との調整を図るべきである」 との方向性は示されているが、審議会の場において、内閣府の担当者からの意見を 聴取するなど(参考人としてなど)の具体的な取組みが必要である。分科会のとりまと め以降での調整は難しい。特に以下のような重要項目については、現時点からのす り合わせが必要。

  1. 障害者の範囲、過去の履歴、障害者を持つ家族、将来発生する障害を有するもの 等の取り扱いについて
  2. 差別の範囲について 間接差別、関連差別の取り扱い。合理的配慮の不提供は差 別に該当するか。私法上の効果を規定すべきか

【第7節 国家資格等】(p58)

(1)必要性
①国や自治体が認可する資格の認定のあらゆる場面で障害に基づく差別は禁止される べきである。

②本領域は障害に係る欠格条項にも関係する点で重要である。

【第8節 家族形成】(p63)

(1)必要性
①婚姻、妊娠、出産、養育といったあらゆる場面での差別の禁止
障害者は性別を問わず、家族形成に置いて、障害のない人と違う状況に置かれてき た。障害のない人と同じように家庭や家族を作ることはできなかった。その一番典 型的な例が「不良な子孫の出生予防」という規定のあった旧優生保護法のもとで、 多くの障害者が強制不妊手術を受けさせられてきた。公式の統計だけでもその数は 1949年から1994 年までに16,520人にのぼる。優生保護法は1996年に「母体保護 法」に改正されたが、被害者に対し、謝罪・補償などの追加的措置もされていない状 況である。現在でも様々な形で障害のない人と比べて家族形成という分野において も多くの困難を負っている。この分野のあらゆる場面での障害に基づく差別を明確 にし、差別を事前に防止し、被害者を保護することは重要である。

【第9節 政治参加(選挙等)】(p68)

(1)必要性
①国民の基本的権利の保障
この分野における障害に基づく差別を禁止することの必要性はことさら述べる必要 もない事であるが、情報・コミュニケーション分野でも述べたとおり、実際は基本 的な権利を行使するための情報保障や選挙権行使のための物理的バリアの解消等は まだされていない。その他、被成年後見人の選挙権喪失といった重大な問題もある。 各則の一分野として位置づけることが必要である。

②障害のない人と実質的に平等な政治参加への道
さらに、被選挙権も含み、障害者が実質的に障害のない人と平等な程度に政治に参 加することを進める大きな一歩となると期待される。

【第10節 司法手続き】(p72 )

(1)必要性
司法手続きは身体の自由という基本的権利にかかわる重要な分野である。現在、知 的障害を持つ人の冤罪事件(宇都宮事件など)も後を絶たず、今年7 月には発達障 害を持つ人に対して社会の受け入れ態勢や内省などを問題にして求刑以上の判決が 出るということもあった。取り調べ等の司法手続き・アクセスへの情報保障、コミ ュニケーションの確保が障害者にきちんとなされていない。刑事手続き、民事手続 き全ての私法の分野における手続きにおいて差別を禁止し合理的配慮義務を明記し なくてはならない。

(2)「手続上の配慮」について(p72)
この分野の手続き上の合理的配慮の不提供における過度な負担を原則認めるべきで ない。これは部会意見と同意見ということである。76pの「合理的配慮の不提供を 正当化する事由」と同様である。

(3)「法的保護の対象」について(p73)
裁判員としての活動や裁判の傍聴に際しても法的保護の対象となるべきである。

(4)「受刑又は身柄拘束中の処遇」について
介助や医療(医療的ケアも含む)が必要な障害者には、当然合理的配慮がされるべ きである。

第3章【紛争解決の仕組み】(p77~p85)

紛争解決のしくみについては、平成24 年5 月25日の第19回差別禁止部会において、太 田修平委員名でJDF の意見を提出しているところである。部会意見にはJDF の意見がか なりの部分で取り入れられたものと評価しており、部会意見を基に差別禁止法に特化し た紛争解決のしくみを法律で定めるべきである。

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